エクソシスト急募

エクソシスト急募 島村菜津 メディアファクトリー(2010/8/25)
目次----------------------------------------------------------------
まえがき 映画『エクソシスト』の知られざる事実


第1章 エクソシストが足りない
ある若い女性の体験
呪いの人形
ヨーロッパに残る呪術信仰
エクソシスト養成講座
エクソシストの国際協会
世界中から聖職者が集う勉強会
マスコミを避けるエクソシスト
「悪魔憑き」はいるのか?


第2章 カトリックとは何か?
カトリック教会の誕生
ピラミッド型組織と世界最少国家
エクソシスト激増の可能性も
教会に忍び寄る危機
移民が揺るがすカトリックの居場所


第3章 聖書のなかのエクソシズム
誤解される悪魔のイメージ
デビルとサタンの違い
悪魔の存在を感じるとき
キリストは最強のエクソシスト
悪魔祓いの原型は聖書に
悪魔を祓うキリストの名
悪魔祓いを行った聖人たち
悪魔に苛まれた聖女


第4章 エクソシズムとは何か?
キリスト教徒が大切にする儀式
儀式普及に一役買ったベストセラー
千年続く聖なる役職
魔女狩り」というトラウマ
エクソシストが増える国


第5章 史上最高のエクソシスト
エクソシストの任命書
偽カリスマを見抜く力
少年に取り憑いた悪魔
夢のなかのミサ
偉大なるエクソシストの肖像


第6章 「悪魔祓い」という聖なる儀式
悪魔祓いの「教科書」
儀式に欠かせない道具
典礼服が意味するもの
悪魔祓いの21カ条
悪魔を見極める方法
悪魔憑きが吐き出した鎖
思いがけない機会
おおいなるエクソシズムの体験
儀式の結末は
少女を襲った悪夢
エクソシズムが救うものは


第7章 近代のエクソシズム事件
ヴァチカンを揺るがす悪魔憑き事件
カリスマ的な黒人エクソシスト
「教科書」改訂で変わる儀式
エクソシズムの新しい目的とは
エクソシズム中の死亡事件


第8章 欧米の悪魔主義
悪魔崇拝の台頭
悪魔崇拝が象徴するもの
カリスマ教祖の没落
カルト映画監督宅の殺人事件
未成年たちの我流サタニズム


第9章 精神医療とエクソシズム
イタリアには精神病院がない
「悪魔憑き」は病気なのか
エクソシズムに逃げ込む人々
心の病とエクソシズム
医学と悪魔祓い
心理学者の考えるエクソシズム
科学とオカルトの境界
「悪魔の憑依」という救い
エクソシズムが医学に投げかけるもの


あとがき エクソシストを巡る旅

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 日本人にとっては意外に思えるが、実はイタリアには精神病院がない。正確にいえば、法律に基づいて消えつつある。この場合の精神病院とは、精神疾患のある患者の治療・保護を専門的に行う、隔離病棟を含む入院施設を持った病院のことだ。イタリアで精神病院を禁止する法律が制定されたのは1978年。制定の理由は、精神病院が非人間的な環境であり、治療よりむしろ病状の悪化を引き起こし、さらには社会福祉予算を当て込んだ不正運営の温床となるというものだった。
 『精神病院を捨てたイタリア 捨てない日本』(大熊一夫著・岩波書店)によれば、イタリアは整備の遅れていた地域精神保健センター(07年に707か所、うち約50ヵ所は24時間体制)などの充実を図りながら、現在も変革を続けている。法律ができたからといって国内の精神病院がいっせいに廃止されたわけではないが、法律の制定以前、約15万人いた精神疾患の長期入院患者は、現在2万人以下にまで減少した。

(タミーノ教授の話) もう一つ意外だったのは、当初、私が予想していたように、相談者たちが社会の隅に追いやられている人でもなければ、南部出身者に多く見られるような特別信仰心の篤い人でもなかった点だ。年のいった心理学者や新聞記者たちの“相談者は知的レベルが低い”という主張も偏見だとわかった」