食品偽装との闘い ミスターJAS10年の告白

食品偽装との闘い ミスターJAS10年の告白 中村啓一 文芸社(2012/7/4)
目次----------------------------------------------------------------
はじめに


第1章 雪印食品の産地偽装〜それはBSE問題から始まった〜
アメリカ同時多発テロ事件のさなかに
「肉言うたら牛肉に決まっとるやろ!」
国産牛肉の買取制度が始まる
買取制度を悪用した雪印食品の詐欺事件
早朝の電話「朝イチで、神戸に行ってくれ」
急ごしらえの寄せ集めチームで手探りの準備
「そんなことは現場で考えろ!」
最初の成果は牛ではなく豚だった
パンドラの箱”を開けてしまった
JAS法にもとづく立入検査の限界


第2章 食品表示の不正は許さない〜渦巻く葛藤〜
ホットライン『食品表示110番』開設
性善説からの大転換 肉にオーストラリアの匂いが?
すっかり様変わりした仕事内容
職員たちから聞こえてきた悲鳴
食糧庁の廃止で突然生まれた2千名の『監視専門官』
「これまでの公務員は捨ててください」
2年弱のブランク
監視専門官は“陽気でお手軽な仕事”なのか
じゃあ、メール何本打てばいいんだ!


第3章 Gメンにつながる赤い糸
弓道部で我慢できなかった先輩の振る舞い
まさかの公務員試験合格と農林省入り
入省3年目で『廊下とんび』の過酷な任務
グリコ・森永事件で『事件屋ケイちゃん』のレッテル
『うまみ調味料』『カレールー』誕生の裏側
はい!消費者の部屋です!
平成米騒動で矢面に
遺伝子組み換え農産物と2度目の京都行き


第4章 ミートホープ偽装牛肉事件〜もう一つの衝撃〜
センセーショナルに報じられた不二家の一件
ミートホープによる牛ミンチ偽装事件の始まり
ギリギリの対応だった『11項目の不適正』公表
行政の不作為が徹底的に叩かれて
食品表示Gメン』の誕生
合い言葉は「社保庁になるな」
白の次は赤
ずさんさを露呈した船場吉兆
廃業の決定打となった食材の使い回し
頼もしい存在になってきた食品表示Gメン
本省の中でも独特の雰囲気に
内部告発”の裏事情


第5章 ようやく掴んだウナギの産地偽装
泣きじゃくる家族の前で
DNA分析技術の進歩と限界
巧妙化したウナギの産地偽装
『里帰りウナギ』の正体は?
素性の分からない“国産”ウナギが大量に
苦し紛れだった一発勝負の産地偽装
農産物でも懲りない偽装が
県域業者名の“公表”は知事の判断


第6章 事故米問題〜濃厚な3日間と激動の一ヶ月半〜
突然の『流通ルート解明チーム長』任命
赤裸々に綴られた有識者会議の報告書
食品表示110番』が発端の契機に
『タコ部屋』ごもりの3日間
Gメンたちの踏ん張りに刮目
急転直下だった事業者名の公表
「訂正がある」とことわった上での事業者名の公表
爪痕を残した事業者名の公表


第7章 食品表示Gメンの経験を生かして
米の世界にも監視の目
“うまみのある世界”だった食品偽装
産地偽装、本当の被害者はどこにいる
全国的なネットワークが最大の強み
記者の目は国民の目
消費者庁による食品表示一元化の動き
実効性の乏しい法律は不幸な違反者を増やす
“食と放射能”を巡るリスクコミュニケーション

おわりに


参考文献

                                                                                                                              • -

 食品表示に関わる法律にはJAS法のほかに食品衛生法などがあって、後者の食品衛生法は、法律の所管はともかく、日々の監督指導を行うのは都道府県や市単位など保健所です。複数の地方自治体の保健所職員同士が直にコミュニケーションを取りながら連携して動いたり、全国統一の司令塔のもとで各地の職員を動かすような組織編成にはなっていません。
 一方、JAS法にもとづく表示監視については、本省の食品表示・規格監視室を筆頭に、7ヶ所の地方農政局地方農政局出先機関である農政事務所(2011年から地域センターや支所に組織再編)までピラミッド型の組織ができていて、それぞれに食品表示Gメンが在庫しています。本省を司令塔にして、該当する地域のGメンを電話一本で素早く動かすことが可能な体制です。