詳解北朝鮮の実態

詳解北朝鮮の実態 西村金一 原書房(2012/5/24)
目次----------------------------------------------------------------
はじめに


第1章 北朝鮮政権内部の動き
1-1 すでに変化が生じていた国家指導体制
(1)従来の指導体制
(2)2010年以降の指導体制
1-2 党、国家機構の新たな勢力とそのバランス
(1)党の主要組織
(2)党、国家の中枢である党中央委員会政治局の役割と今後の権力闘争
(3)実質ナンバー2に抜擢された李英鎬軍総参謀長(次師)が軍のトップに
(4)朝鮮労働党中央委員会書記局(秘書局)の役割と権力バランス
(5)党の意思決定を裏付ける最高人民会議と実行する内閣
1-3 軍内勢力図の変化
(1)党中央軍事委員会が最高の軍事指導機関に
(2)権力の重心から外れた国防委員会
1-4 「党を支える軍」から「先軍政治国家」、今「軍・秘密警察国家」に変貌中
(1)軍の影響力の拡大
(2)軍人が党の主要ポストに就任
(3)軍の重心は国防委員会から中央軍事委員会へ移行
(4)党の機能の一部が軍に代わる
(5)金総書記死去後、軍歴のない党員に軍の階級が付与される
(6)張成沢と対立した主要幹部の失脚、逮捕、処刑など粛清が目立つ
(7)失脚した主な要人とその失脚理由
(8)軍・秘密警察・護衛軍団を支配する人物は誰か
1-5 金総書記の実質的な地位と権力を金正恩が引き継ぐことができるのか
(1)金正日総書記の権力基盤はどうか
(2)金正日総書記への権力移譲と比べてどうか?
(3)金正日総書記発病からの権力移譲
(4)息子達と後継者
(5)その他の権力移譲にかかわる動き


第2章 北朝鮮の軍事体制・軍事戦略
2-1 北朝鮮人民軍の指揮・統制機構
(1)北朝鮮人民軍指揮統制の特徴とその変化
(2)金体制を維持する警察・護衛機構は張成沢氏の統制・指示を受ける
2-2 人民武力部国防省)、軍総政治局の役割と組織
(1)人民武力部の役割
(2)人民武力部各組織の機能
(3)軍部隊の政治的統制を行う軍総政治局
2-3 北朝鮮人民軍の軍事編制
(1)北朝鮮人民軍の作戦指揮系統と組織
(2)軍総参謀部司令部の組織
2-4 軍事予算が国家経済にダメージを与えている
2-5 北朝鮮の軍事戦略、戦略目標は
(1)北朝鮮人民軍事戦略策定のプロセス
(2)国家目標は朝鮮半島統一と軍事優先
(3)米韓からの強い脅威認識と中国依存の同盟関係
(4)劣勢を勝機に変える戦法―軍事基本構想(軍事政策)
(5)火力、機動力、技術に勝る米韓連合軍と如何に戦い勝利するか―軍事戦略(運用構想)
(6)軍の劣勢を補完する整備構想

第3章 北朝鮮の軍事危機レベルは高まっている
3-1 北朝鮮の過激性は今、危機ラインまで高まった
(1)約60年間にわたる軍事攻撃、軍事挑発の継続
(2)朝鮮半島における危機は、1968年以降では最大の危機レベルへ
3-2 韓国の大統領を狙う北朝鮮のテロ、ゲリラ攻撃
(1)青瓦台襲撃未遂事件
(2)ラングーン爆弾テロ事件
(3)大韓航空機爆破事件
(4)韓国国内における暗殺工作
3-3 日本海から近づいた米偵察機への容赦ない対応
(1)米海軍情報収集艦プエブロ号の捕獲
(2)米国海軍電子偵察機の撃墜
(3)電子偵察機による偵察活動
3-4 北朝鮮の戦争準備―南侵トンネル平壌防空壕建設
(1)非武装地帯(DMZ)での行動
(2)南侵トンネルの建設など常に南侵準備
(3)第1〜4トンネルは、どれくらいの兵力を短時間に韓国に浸透させられるのか
(4)常に戦争を意識した平壌地下300mの防空壕
3-5 海上・海中から韓国への潜入行動
(1)韓国への海中・海上からの潜入継続
(2)サンオ級小型潜水艦による潜入(江陵浸透事件)、南侵時の後方かく乱を想定か
(3)ユーゴ級小型潜水艦による潜入、南侵時の後方かく乱を想定か
(4)高速半潜水艇の潜入と韓国海軍による撃沈、南侵時の米韓軍後方連絡線の遮断を想定か
3-6 西海の北方限界線付近での衝突および軍事挑発
(1)近年における西海の北方限界線付近での衝突および軍事挑発の概要
(2)第1延坪海戦
(3)第2延坪海戦
(4)大青海戦
(5)韓国哨戒艦「天安」の沈没事案
(6)韓国延坪島への砲撃
3-7 近代戦で重要な役割を果たすサイバー戦、電子戦攻撃
(1)北朝鮮の情報戦
(2)サイバー戦を遂行する専門家の養成
(3)サイバー戦を担う組織
(4)北朝鮮によるサイバー攻撃の現状
(5)電波妨害(GPS妨害)


第4章 北朝鮮核開発の実情と核戦略
4-1 北朝鮮核開発の進展状況
(1)核兵器開発の経緯
(2)プロトニウム型核兵器開発の進展状況
(3)濃縮ウラン開発の進展状況
4-2 核実験はどのようなものだったか
4-3 核関連施設はどこに何があるか、どうなっているか
4-4 核技術の導入及び核拡散
(1)核技術の導入
(2)核拡散とその防止はどのように行われているか
4-5 北朝鮮の核開発をめぐる交渉戦略
4-6 将来の核の脅威は


第5章 長射程・大型化する弾道ミサイル開発
5-1 各種弾道ミサイル開発、特に長射程・大型化を進める
5-2 大型弾道ミサイル発射のための基地整備
(1)東倉里発射実験基地
(2)舞水端里発射基地
(3)弾道ミサイル実験配備基地
5-3 弾道ミサイル開発凍結の裏で開発継続
5-4 弾道ミサイルの拡散状況
5-5 地対艦ミサイルで対日恫喝報道
5-6 各種弾道ミサイルの開発とその能力
(1)各種ミサイルの開発・配備(2)(3)(4)(5)(6)
5-7 米大型艦艇を狙う地対艦ミサイル


第6章 勝ち目を徹底的に追求する軍事力
6-1 北朝鮮人民軍の軍事力
(1)北朝鮮人民軍戦力の概要
(2)韓国との戦力比較からみた北朝鮮軍事力の特色
(3)非対称的な軍事力に重点志向
(4)有事の際の中枢地下トンネル
6-2 勝ち目を徹底的に追求している軍事力
(1)攻撃も防御も可能な配備、特に防御では地中の坑道で耐えられる
(2)長射程火砲をDMZ沿いに配備して韓国の都市や韓国軍を狙う
(3)記念館に飾れそうな旧式で老朽化している装備を使いこなす
6-3 地上軍戦力の特色
(1)韓国軍の1.8倍の戦力を有する地上軍とその特色
(2)95万人地上軍の兵力と配置
(3)歩兵・機械化・戦車各軍団の特色
(4)地上軍の攻撃で何ができるか。またその弱点は
6-4 海軍戦力の特色
(1)海軍力の戦力とその特色
(2)海軍の編制と配備
(3)海軍艦艇の数およびその特色
(4)海軍の戦闘能力と弱点
6-5 空軍戦力の特色は
(1)空軍の戦力とその特色
(2)空軍の編制と配置は
(3)保有する空軍機・防空兵器とその数
(4)空軍の戦闘能力と弱点
6-6 特殊部隊・工作機関の特色は
(1)北朝鮮最強の特殊部隊の特色
(2)あらゆる特殊作戦能力を有する特殊部隊の編制と能力
(3)特殊部隊が韓国・日本へ潜入上陸し攻撃する場合の要領
(4)工作機関等の種類と特色
6-7 化学・生物兵器開発の現状は
(1)化学兵器
(2)生物兵器


第7章 北朝鮮経済の現状は
7-1 ますます悪化深刻化する北朝鮮経済
7-2 北朝鮮経済好転の可能性
(1)交通、運輸に回復の兆しは見えず。怪しげな動きをする貨物船
(2)工業生産は低迷。「強盛大国」建設に向けセメントの生産を重視
(3)農業および食糧事情
(4)資源、エネルギー不足は慢性的で頼みの中国からの支援も減少している
(5)外貨獲得のため、鉱物資源が輸出され採掘権も売却される
7-3 北朝鮮経済の特殊性
(1)地下経済への依存が高まり、北朝鮮を変化させる要因になりつつある
(2)韓国からの多額な支援に依存
(3)米国からの食糧支援に期待
(4)経済困窮状況にもかかわらず過剰な軍事負担
7-4 北朝鮮貿易の変化
(1)北朝鮮の貿易傾向
(2)北朝鮮の不正輸出
7-5 北朝鮮の経済政策
(1)建前上の経済システム
(2)経済管理改善措置の導入
(3)対外経済政策
(4)北朝鮮の金融制度と金融制裁
7-6 軍需産業・兵器貿易の特色
(1)北朝鮮軍需産業構造
(2)第2経済委員会
(3)兵器貿易


第8章 不満が増大しつつある北朝鮮社会
8-1 厳しさ増す北朝鮮人民の生活、首都平壌でも生活事情が悪化
(1)全般
(2)北朝鮮市場での米、生活必需品の価格急上昇
(3)社会を大きく揺さぶる可能性を秘めた社会現象
(4)特権階級のみが住む平壌でも生活事情は悪化へ
8-2 北朝鮮の監視と取り締まり
(1)住民監視組織
(2)住民監視とデモの取り締まり
(3)収容所の実体はどうなのか
(4)公開処刑
8-3 国民の不満が行動に現れるようになった
(1)情報の流れは止まらない
(2)中東情勢の影響と対策
(3)人民の不満が騒動に発展し、件数は増加しているが、拡大には至っていない
(4)騒動がデモに発展する可能性は低いが、要因が重なれば予想外の方向に発展する場合も

第9章 北朝鮮と関係諸国
9-1 体制維持のための多国間関係
(1)北朝鮮から見た周辺諸国の脅威認識
(2)北朝鮮と多国間関係
9-2 北朝鮮との2国間関係―米朝、中朝、露朝、日朝、南北
(1)米朝関係
(2)中朝関係
(3)露朝関係
(4)日朝関係
(5)南北関係


第10章 北朝鮮の将来(政変・崩壊の可能性とシナリオ)
10-1 金総書記体制から金正恩体制移行後の危機
(1)政権内部の動向
(2)軍事体制と動向
(3)各国との関係
(4)経済状態
(5)国内の社会状況
10-2 北朝鮮で政変、崩壊は起こるか
(1)政変の可能性
(2)国家体制の変化のシナリオ
(3)シナリオの公算


あとがき


主要参考文献


付録1 北朝鮮および周辺諸国の動向年表
付録2 北朝鮮要人
付録3 北朝鮮・国連等の動向と多国間交渉の流れ
付録4 空軍機の型式・性能諸元
付録5 地対空ミサイルの型式・性能諸元
付録6 海軍艦艇の型式・性能諸元
付録7 北朝鮮道都などの主要都市およびその境界

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 防空兵器については、地対空ミサイルSA‐2×179基以上、SA-3×133基、SA-5×38基、新型地対空ミサイル(数量不明)、携帯地対空ミサイルSA-7/14/16など約6000基を保有している。SA2/3/5は旧式であり対レーダーミサイル(Anti-Radiation Missile:ARM)に容易に破壊される可能性が高く、北朝鮮の都市防空能力は著しく低い。だが、新たに導入したロシア軍のS-300と同一の技術を使用している新型地対空ミサイルKN-06(写真「北朝鮮新型地対空ミサイルKN-06と同型のロシア製S-300」参照)および携帯地対空ミサイルは、航空攻撃してくる米韓空軍戦闘機および巡航ミサイルを撃墜することができると考えられる。