昭和20年8月20日 日本人を守る最後の戦い―四万人の内蒙古引揚者を脱出させた軍旗なき兵団

昭和20年8月20日 日本人を守る最後の戦い―四万人の内蒙古引揚者を脱出させた軍旗なき兵団 稲垣武 光人社(2011/12/29)
目次----------------------------------------------------------------
まえがき


第1章 蒙古桜の花ひらくとき
35年目の出会い
ゴビにあがる独立の旗
関東軍の画策
高原の楽園


第2章 銃剣の平和が崩れた日
ソ連参戦
「運命」交響楽
荒野の将校斥候
根本軍司令官の決断


第3章 迫るソ蒙軍阻む軍旗なき兵団
荒武者中尉と女子交換手
張家口の混乱と軍首脳更迭
大阪の“弱兵”と軍旗なき兵団
軍使の白旗に弾丸の雨
「隊長殿、射たせて下さい」


第4章 日本人引揚げを守った肉弾の壁
狙いは切取り強盗
緊急引揚げへニセ命令
通訳官の至誠
陣内侵入の敵と白兵戦
兵士が投げたリンゴ
助っ人中隊、苦戦す
最後の血戦


第5章 夜霧にまぎれ敵前撤退
病兵を支えた焼きおむすび
辻田参謀、自決図る
拒馬
山中行軍
胸張る長城の門


第6章 奇跡の引揚げを支えたもの
居留民との交情
北京の門に迫るソ蒙軍
かっ払い集団に威嚇奏功
赤い鳥居に泣いた日


第7章 残された人々の苦難
プロイセンの同胞救出作戦
特務機関護衛兵の生々流転
漢奸の処刑あいつぐ張家口
大同“無国籍兵団”の数奇な運命
稀有の記録が教えるもの

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 また、内蒙古への日本人移住は、満州に比べ、ずっと歴史が浅く、蒙古自治政府の成立後、満州や日本から移住して来た者が大部分で、満州のように、2代、3代にわって永住している人間はいなかった。だから、敗戦後の撤退も、土地に執着が少ないだけに迅速であった。官僚、技術者、軍人家族といった身軽な人たちが大部分であったことも幸運だった。満州の引揚げと同一視することはできないのである。
 しかし、銃剣で支えた平和が、もろくも崩れた時、内蒙古といえども、居留民は国家の庇護を失い、流亡の民となる岐路に立たされた。その混乱の状況と、迫り来るソ連・外蒙軍の虎口から、間一髪、同胞を救った駐蒙軍の、国破れて後の力戦に筆を進めよう。