大陸打通作戦―日本陸軍最後の大作戦

大陸打通作戦―日本陸軍最後の大作戦 佐々木春隆 光人社(2008/08)
目次----------------------------------------------------------------
はしがき


序章 桂林攻略までの概略


第1章 南部粤漢線打通の準備
桂林西南方山地帯の掃討
桂林飛行場     長安鎮へ     反転


零陵への集結
零陵でのこと


作戦準備
挺進準備     道県出張     青天の霹靂      作戦準備に返る


第2章 南部粤漢打通作戦
乙挺進隊の発進


主力の突進


ああ、無念


粤漢線の確保


南雄作戦
はじめての本隊     雪中の攻撃     香月大隊長の散華


韶関の警備


第3章 対米上陸防御準備(広東)
作戦研究


華の広東へ
小柴大佐怒る


台山地区の防御準備


歩235第1大隊に転任
後始末     鬼の涙     赴任


マカオ北側にて


第4章 決戦場目指して
北上の決定


大受験(三南作戦)
追及


贛州飛行場の爆破


後衛の苦悩
万安の戦闘     贛江渡河・吉安攻撃命令     吉水南郊の戦闘     希望なき行軍


最後の構想
最後の渡河構想


第5章 暴に報いるに怨をもってする勿れ
青天の霹靂


捕虜の当塗県警備
傷心の行軍     慕われた警備     県長の別離の辞      呉警備隊長の苦衷


武装解除・労役
武装解除     道路修理


南京清掃作業
載根法中佐     辛い土木作業     南京の民情     事件突発     載所長の別離の辞


復員


第6章 回顧
兵力最小限運用の通弊      後手、後手戦略の通弊      第1次長沙作戦      第2次長沙作戦      浙贛作戦      江北殲滅作戦     江南殲滅作戦      常徳作戦      湘桂作戦・南部粤漢打通作戦      戦力逓減と無策     戦力評価の独善性


あとがき

                                                                                                                              • -

 日本人には妙な性向があって、秀吉の大兵力による圧倒型戦力、即ち“位取りの戦法”よりも、寡兵で衆敵を破った桶狭間厳島の戦いを重視する。しかし後者は1か8かの要素を含み、多分に僥倖に恵まれた面があり、国家の浮沈を賭ける戦略ではない。前者は計算づくめの戦略であるがために勝敗を当然視して、評価したり、研究したりする後人をあまり見かけないのを不思議に思う。これは日本人の合理観に基づくものでなく、小さい島国の現実が育んだ性向と思われる。むろん最少の費用と最少の犠牲で目的を達するのが本命であるけれども、結果と原因とを混同してはならぬ。
 その一例が武漢地区の第11軍(7〜8個師団、兵力23万余名)で、その任務は積極作戦をもって重慶軍の抗戦力を破砕衰亡させるにあった。よって第11軍は幾多の作戦に明け暮れて多くの犠牲を払ったけれども、重慶軍は百数十個師・百数十万の大軍で包囲していたのだから、所期の成果は望むべくもなかったのである。攻勢兵力が過少であったのだ。
 よって昭和17年には16個師団をもってする四川(重慶)作戦が計画された。だが時すでに遅く、南東方面の戦況の余波で中止され、ついに日の目を見ることはなかったのである。
 だが考えてみれば、四川進行は大東亜戦争前に敢行すべきであり、その兵力整備は、終戦時には総兵力550万・百数十個師団を擁していた事実からすれば、昭和15〜16年の時点でそれ相応の兵力を整備することはあながち不可能ではなかったと考える。当時は不可能視されていたようだが、それは国力に見合った所要ぎりぎりの兵力を遣り繰りしたい貧乏性の現れで、切羽詰まらねば思い切れない性癖が具現した誤りといえよう。
 また第11軍が行った多くの作戦も使用兵力の計算が甘く、十分と考えた兵力もいざ作戦を始めてみるといつも不足感を拭えなかった。数多く繰り返されたピストン作戦が所期の効果を収め得なかったのは、一に敵を見くびって、所要に充たない兵力をもって作戦を終始するか、慌てて逐次に増加するのを例としたことでうかがえる。だから計画どおりに作戦しても、敵に耐えがたい打撃を与えるに至らず、いずれも不徹底に終わったのであった。
 もし、第11軍に2、3個の機動予備兵団を控置する余裕を与えていたならば、支那事変の推移はよほど違っていたと思料される。2、3個師団をケチったがために、大変な結果になってしまった。
 むろん、ありあまる兵力を運用できる国は現実には存在しない。だが戦力は所要を充たしてこそ意味があり、抑止力となる。吹けば飛ぶような防御力は飾り物に過ぎない。否、侮りを受ける。

ブラック・ラグーン17話 ピンチに箱に入った擲弾銃を渡すレビィにエダ「なんだよ、こんな上等なもんあんなら最初から出せよエテコウ」 レビィ「売りもんなんだよそいつは」 エダ「関係あるかよ、命は一つだぜっ!」
遊兵化したのではないのか?との疑心暗鬼と疎外感。自分探しの時は急にやってくる。