限界集落の真実:過疎の村は消えるか?

限界集落の真実:過疎の村は消えるか? 山下祐介 筑摩書房(2012/1/5)
目次----------------------------------------------------------------
序 むらは消えるか―東日本大震災を経て
東日本大震災が晒し出した現実     本書の構成     周辺から始める集落再生


第1章 つくられた限界集落問題
1 報道のイメージ、現場の困惑
報道からつくられる限界集落のイメージ     「問題がないのが問題だ」
2 限界集落論とは何か―出発からの疑問点
過疎問題のうつりかわり     限界集落論とは何か     疑問点①―高齢化率をなぜ過度に重視するのか     疑問点②―集落とは何か     疑問点③―社会解体予言の取り扱い方
3 2007年―問題がつくられたとき
背景としての参院選自民党大敗―地域間格差問題の象徴として     2010年過疎法延長をめぐる駆け引き     では、限界集落問題は虚構か
4 過疎地域をめぐる本当の問題とは
世代間の継承の問題として     誰の問題か、誰が解決すべき問題なのか


第2章 全国の過疎地域を歩く
1 鹿児島県南大隅町・旧佐多町―本土最南端の町
集落消滅は本当に生じているのか     学会での激論     南大隅町・旧佐多町の歴史       半数以上が限界集落―それでも高齢化による消滅なし     しのびよる「あきらめ」
2 新潟県上越市・旧大島村―消えた村の実態
豪雪地帯、急峻な地形     出稼ぎと東京からの近さ     高齢化による集落消滅はなかった
3 京都府綾部市―水源の里の取り組み
シンポジウムからの発信     下流が上流を支える
4 島根県邑南町―過疎問題の先進地で
過疎問題が最初に現れた地・島根     過疎の現状     それでも集落問題はごく近年のもの
5 秋田県藤里町―急速に進んだ高齢化
高齢化率トップとなった秋田県     人口動態調査から分かること     地域別には北部が問題     秋田県藤里町―鉱山・林業衰退による過疎     消えた集落はどうなっているのか     集落間連携という課題
6 高知県仁淀川町―天界の里
天界の里の苦悩     地域の誇り、アキバ神社大祭にも暗雲
7 高知県大豊町限界集落発祥の地
高知県隣接の過疎最先進地域      交通の要衝と杉林     過疎高齢化の進行が引き起こす問題     30年やってきたことは無駄ではない
8 限界集落論・20年後の真実
いま迎えてる現実     共通すること、異なること


第3章 世代間の地域住み分け―効率性か、安定性か
1 世代から見る過疎地域
注目すべき昭和一桁生まれ世代     排出される世代、残る世代     世代による地域住み分け
2 人口変動パターンと過疎
人口吸収都道府県(/型・N型)と排出県(M型)     市町村別に見た排出・吸収―2Λ型の人口推移     人口排出とともに定住が過疎問題を生む     世代間の住み分けは合理的でさえある     2010年代の新たな危機―浮上する世代継承問題
3 超高齢地域のタイプ
国勢調査地域メッシュ統計から     超高齢地域はどこに現れるか―青森県の場合     超高齢集落の5つのタイプ     継承すべきものがあるか     希望ある展開を導くこと
4 効率性の悪い地域には消えてもらった方がいいのか
限界集落は非効率な場か     誰にとっての効率性か     他者が判断できるのか―医療のアナロジー     効率性の価値vs安心・安全・安定を求める価値


第4章 集落発の取り組み
1 集落再生プログラムに向けて
集落再生を考えるに当たって     発想の転換が必要
2 住民参加型バスの先駆性
画期的なバスの開通     15年後の現実
3 鰺ヶ沢町の過疎問題
バブル期前後の開発失敗     大学との協定やまちづくりファンドも不発     鰺ヶ沢町の集落状況     職員の意識の転換
4 深谷地区活性化委員会
炭焼きの村の共同性     戦後の激変と2000年代の少子高齢化     岩手への過疎先進地視察から―自分たちが良く見えること     戻ってくる可能性がある人もいる―全戸アンケートの実施     黒森のミニ白神―モニターツアーの試み
5 取り組みから導き出されたこと
メディアの反応      安定の根拠としてのむらと家族     集落こそ再生の起点


第5章 変動する社会、適応する家族
1 通う長男たち
戻るつもりの子供たち     毎週のように帰って米づくり     ふるさとに片足を残した生活     戻るつもりでふるさとに新宅を建てる     見落とされている集落外の集落構成員
2 生活安定機構としてのむら
家とは何か、むらとは何か     人生周期と家族周期     近世の人口安定機構     人口許容量が拡大するとき
3 近代への人口転換と戦後日本の社会変動
日本社会の人口転換     戦後日本社会変動と人口移動     家から見る戦後の大変動     家とむらをめぐる3種類の生き方     サイクルは続くか
4 広域に広がる家族
人々が準備してきたこと     ふるさとにつなぎとめるもの―家産と扶養     集落再生のカギ―Uターンは実現するか
5 限界集落をめぐる世代と地域
家族と世代から見る限界集落問題     集落の課題、都市の課題


第6章 集落再生プログラム
1 下北半島―過疎と原発の間で
過疎問題が凝縮された半島     むつ市の一極集中と郊外化     風間浦診療所にて      佐助川小学校の前で     マタギのむら、畑の現実―共同売店の閉店     年寄りの暮らし、若い人たちの暮らし     都市効果と原発効果―大間・東通
2 発想の転換を―経済・雇用から「暮らし」の問題へ
福島第1原発事故の暗い影     無効から下りてくる過疎対策     発想の転換を―地域再生の主体は誰か     3つのステップ―地域別の課題から
3 集落の主体性を引き出す―集落点検という手法
徳野貞雄氏のT型集落点検     離れていても家族は家族      「帰ってきたらええ」     集落点検から引き出されるもの
4 集落支援のための体制づくり―周りの地域を巻き込む
小さな祭りを支える有志たち      近くの集落との関係づくり―社会的主体としてのむら      主体喪失の危機としての限界集落問題     集落と基礎自治体―合併で失った主体性を取り戻す     都市の資源を使いこなす     メディアが左右するリスク問題の現実     都市との関係を再構築する      中心と周辺を考える
5 中央と地方―周辺発の日本社会論
2005年段階での人口増・人口減地域      中心から見えない周辺     成長モデル・競争モデル・衰退モデル     不理解から来る破壊を避ける―危機感から始まる再生     大都市の暮らしと地方の暮らし     周辺発の日本社会論へ


あとがき


参考文献
本書のもとになった研究
謝辞

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 先述したように、地域社会の存続可能性の問題を、戸数の少ない、子供のいない集落だと考えるなら、以上の5のタイプのうち、①や②に規模の小さな危険集落が潜んでいることになる。本書の議論でも以下、限界集落論の主題としては、そうしたむらの事例を念頭に考えていくことになる。
 ところで、繰り返すように、超高齢地域が現れるのは、(1)高齢者を構成するある年齢層が「定着」している一方で、(2)その下の年齢層を構成する世代が「排出」し、(3)そのために子供を産む世代がなく、「少子化」が進行していることによる。
 このうち(1)は、日本社会の多くの場所で見られることであり、寿命の延長による効果でもあるので、決して病理ではない。(1)に加えて、(2)(3)が生じている場所に過疎・少子高齢化の問題が生じてくるのである。
 とはいえ、(2)(3)の問題にしても、排出しっぱなしではなく、地域にいつの日か人が戻ってくればよいことになる。そしてこの視点からすと、①村落型、②開拓村型の場合は、農地や山林、村の文化など継承すべきものがある分、議論はしやすいことになる(むろん、獣害のひどい田畑、不漁や密漁被害の続く漁場の権利は、継承という面では問題となる)。また③伝統的町・都市にも同じように、継承すべき共通の財産や生活資源、文化的資産などが存在する。実際に、我々は毎年、盆と正月にその一時的帰還を目の当たりにする。その地に次世代へと継承するものがある限り、帰還は決してありえないことではない。
 これに対し、④鉱業・林業などの近代初期の原料生産都市、⑤初期郊外住宅地は、戸数は多いが、ここにはしばしば継承すべきものがとくにない場合が多く、存続の道筋が具体的に描きにくいところがある。こうした場所でこそ、撤退か再編かの具体的な議論が必要になってくる可能性があるわけだ。

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