日本帝国の申し子高敞の金一族と韓国資本主義の植民地起源 1876-1945

日本帝国の申し子高敞の金一族と韓国資本主義の植民地起源 1876-1945 カーター・J・エッカート(著),小谷まさ代(翻訳) 草思社(2004/1/25)
目次

日本の読者へ

序文

第Ⅰ部 朝鮮における資本主義の誕生
資本主義発展の原動力となった帝国主義

第1章 商人と地主 ◎資本の蓄積、1876年〜1919年
新しい市場経済  
商人  
地主  
高敞の金一族
地の利  商魂たくましい地主  企業家としての成功

第2章 産業資本家 ◎胎動と誕生、1919年〜45年
工業化への取り組み
産業資本主義の胎動
新世代の登場―高敞の金一族  経済状況の変化  植民地政策の転換
産業資本家の誕生
朝鮮資本主義に対する障害  朝鮮人資本の割合  京紡財閥

第Ⅱ部 発展パターン
朝鮮資本主義と帝国資本主義との緊密な協力関係

第3章 資本家階級と国家 ◎金融面での結びつき
株式資本
補助金
融資
融資の出所  融資の条件  融資の全貌

第4章 資本家階級と国家 ◎経営上のパートナー
政策の決定と実施
戦時統制  親睦会(社交クラブ)  
利益第一主義
京紡―戦時下における企業と国家政策の融合  京紡―戦時の奉仕に対する見返り
まとめ

第5章 本国と後背地のはざまで ◎原料と技術獲得
原料
綿糸  調達プロセス  原棉
技術
機械類  専門技術者  

第6章 本国と後背地のはざまで ◎市場を求めて
販売ルート
市場の構造―満州から中国へ
その他要因  植民地政策  京紡と満州  南満州紡績会社  京紡と中国
総括

第Ⅲ部 資本家階級と市民社会

第7章 「文句をいわずに」 ◎資本家は労働者階級をどう扱ったか
京紡での労働者の生活
反抗と抑圧
1926年の京紡のストライキ  1931年の京紡のストライキ
1931年以降

第8章 祖国よりも階級の利益を ◎内鮮一体と朝鮮の資本家階級
朝鮮のナショナリズムと資本主義
事大主義の遺産  植民地のメンタリティ  後発国の定め  経済的な協調  時の流れ
内鮮一体
資本家階級の反応  高敞の金一族  祖国よりも階級の利益を  資本家ナショナリズムの終焉」

結論 植民地時代の遺産

付録1 統監府と総督府(1905〜45)
付録2 「正義のために死す―皇国臣民の責任は重大なり」
原注
参考文献
解説
訳者あとがき
索引

朝鮮においても、解放前夜の資本家は独裁政権と強く結びついていた。しかしそうなった理由は、資本家と地主が未分化だったために資本家の自由主義が抑圧されたからではない。そもそも朝鮮の資本家は自由主義の生得権など有していなかった。彼らの社会的起源は、官僚制度と階級制度を特徴とする貴族的な政治文化と密接な関係がある。さらに重要な点は、朝鮮の資本主義が日本の植民地体制という子宮のなかで育まれたということである。すなわち資本家は、日本の植民地政府という独裁政権の庇護を受け、これと密接な協調関係を維持しながら成長したのである。このような独裁政権は500年の李朝の歴史においても、さらには日本の歴史においてもまったく前例がなく、植民地支配の必然として生み出されたきわめて機能的な特殊な形態であった。
だが、総督府という独裁政権は、資本家の成長を妨げるどころか手厚い保護を与えた。おかげで朝鮮の資本主義はこの強圧的な体制の下で初めて成長と繁栄のうねりを体験したのである。そして朝鮮の資本家は1945年までに、独裁体制の枠内に完全にとりこまれることとなった。それどころか、資本家が戦後の朝鮮社会にもちこんだ政治哲学は、「独裁は経済効率も収益性も高い」というものだったのである。
さらに、きわめて植民地主義的な特質を有していた1945年以前の工業化は、独裁体制に基本的に満足していた朝鮮人資本家を、よりあからさまな反民主主義的態度へと導いていった。植民地の工業開発に参加したために、朝鮮の資本家は労働者に対する経済的搾取を強めただけでなく、ついには朝鮮人としての独自の民族性を抹殺しようとする日本の試みにまで手を貸すこととなった。朝鮮人資本家は労働者階級に歩み寄る能力も意志もなく、また民族主義者としての資格にも欠けていたため、朝鮮社会における彼らの政治的な立場はしだいに不安定になり、総督府の強圧的な力にますます依存することとなった。植民地時代末期には、資本家にとって独裁体制は、資本の蓄積に都合のよい政治形態というだけでなく、経済的にも民族的にも不満が蔓延する社会を生き延びるための政治的必要条件にもなっていた。
以上のことを総合して考えると、植民地資本主義の遺産が正と負の両面を備えていることは明らかである。植民地産業開発は朝鮮半島の活発な経済発展の土台を作った一方で、その代償もまた高かったといえる。強圧的な国家権力と外国への高い依存性に対する朝鮮人の不満と怒りは、民主主義とナショナリズムの気運に満ちた戦後の朝鮮で爆発することになった。1948年以降の韓国経済に貢献したのは植民地時代の遺産だけではないかもしれない。だが、この国の近年の変容、とくに急激な工業化を推進した朴正煕政権時代の20年間の変容を見れば、植民地研究者はまるでデジャビュ(既視感)のような不思議な感覚に襲われる。歴史はやはり圧倒的勝利を収めた。つまり、過去は現在のなかに能動的に作用して生きているのである。

とらドラ!op 『プレパレード』
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