アジアのエビ養殖と貿易

アジアのエビ養殖と貿易 多屋勝雄編著 成山堂書店 (2003/12)
目次

はしがき

第1章 アジアのエビ養殖
はじめに
1.1 エビ養殖の展開と養殖池の分類
1.1.1 東南〜南アジアのエビ養殖の展開
(1)エビ生産の変遷 (2)養殖池の分布
1.1.2 エビ養殖池の分類
(1)粗放養殖 (2)準集約・集約養殖 (3)国別に見る養殖池のタイプ
1.2 エビ養殖業の抱える問題
1.2.1 エビ養殖業の展開と構造
(1)集約化の問題点 (2)地域経済への貢献度
1.2.2 地域資源の濫用と環境破壊
(1)土地囲い込み (2)マングローブ林の破壊 (3)周辺水系・土壌の汚染
おわりに−「持続可能なエビ養殖」はあるか−
参考文献

第2章 インドネシアのエビ漁業 −日本への輸出が与えた影響−
はじめに
2.1 エビトロール漁業の展開と冷凍エビ輸出
2.1.1 日本の冷凍エビ市場の形成と資本の海外進出
2.1.2 エビトロール漁業の発展
(1)日系エビトロール合弁会社 (2)華人資本によるエビトロール漁業
2.1.3 エビ漁獲量と冷凍エビ輸出量の増加
2.1.4 トロール漁業の禁止と漁業政策の転換
(1)トロール漁業の禁止 (2)漁業の近代化と零細漁業振興
2.2 エビ漁業の展開
2.2.1 日本の冷凍エビ市場の拡大変化(80年代半ばから90年代まで)
2.2.2 台湾のエビ養殖技術の確立とその導入
2.2.3 伝統的粗放エビ養殖と集約養殖
2.2.4 政府のエビ養殖振興政策
2.2.5 大規模エビ養殖事業の展開
2.2.6 病気の発生とエビ養殖事業の危機
2.3 エビ産業の再編と冷凍エビ輸出構造の変化
2.3.1 日本の冷凍エビ市場構造の変化(90年代)
2.3.2 大企業を核としたエビ産業の再編
(1)大規模エビ漁業会社の台頭 (2)大企業主導型エビ養殖業の発展
2.3.3 商品の多様化、ブランド化を目指すエビ冷凍加工会社
2.4 日本への冷凍エビ輸出がエビ産業に与えた影響
2.4.1 日本市場に依存したエビ産業と輸出構造の形成
2.4.2 エビ産業の発展と零細養殖農民
2.4.3 進む環境破壊
おわりに
参考文献

第3章 「エコシュリンプ」と粗放養殖風景
3.1 対談「エコシュリンプ」−人と人との関係から生まれたエビ−
3.1.1 エコシュリンプの始まり
3.1.2 エビ池の管理人と人件費
3.1.3 生産履歴をとる−オーガニック・プロジェクトへの発展−
3.1.4 収穫から加工場まで−仲買人との取引−
3.1.5 HACCP対応の加工場から日本へ
3.1.6 エコシュリンプは人と人の関係
3.2 インドネシアの粗放養殖風景
3.2.1 稚エビを掬う人々
3.2.2 養殖池を耕す
3.2.3 肥料を育て、餌を育てる
3.2.4 エビの収穫
3.2.5 池さらいの日
3.2.6 養殖池へ
3.2.7 タンバックを歩く
参考文献

第4章 タイ国のエビ養殖業
4.1 タイ国のエビ養殖業の展開
4.1.1 日本のエビ輸出とタイ国との関係
4.1.2 タイ国におけるエビ養殖業の展開過程
4.2 新しいエビ養殖業の台頭−内陸部エビ養殖業の実態−
(1)養殖業展開の背景 (2)養殖方法 (3)経営実態 (4)禁止措置 (5)養殖業展開と禁止措置の背景
4.3 エビ養殖業に関する統計的把握
(1)エビ養殖業の推移 (2)地域別養殖概況
4.4 エビ養殖の経営の概要
(1)着業に関する初期投資 (2)種苗 (3)飼料 (4)雇用者給与 (5)育成 (6)病気・水質検査 (7)収益性
4.5 エビ養殖業の抱える課題と方向
参考文献

第5章 マレーシア国の養殖事業と土地利用調整
5.1 水産養殖事業の拡大とその背景
5.1.1 問題の所在
(1)養殖増産計画による環境への圧力 (2)マングローブ林開発政策の整合性
5.1.2 養殖事業経営体数と養殖生産量の動向
(1)養殖経営体数の動向 (2)養殖生産量の動向
5.1.3 汽水域におけるポンド養殖の動向と特徴
5.1.4 汽水域における生け簀養殖の動向と特徴
5.2 マングローブ地域の土地利用
5.2.1 マレーシア国のマングローブ林管理
(1)都市的利用との調和 (2)マングローブ林に対する住民の認識
5.2.2 土地所有制度と開発方式
5.2.3 大規模養殖事業計画と調整システムの限界
5.2.4 エビ養殖の浸透が農魚村に与える影響
おわりに

コラム 青の革命に抗う零細漁民−マレーシア国ペナン浅海漁民福利協会−

第6章 ベトナム国のエビ養殖と流通
はじめに
6.1 ベトナムのエビ養殖とその類型
6.1.1 粗放型(クァンニン省ティエンイェン郡)
(1)飼育方法 (2)収穫量と経営状況
6.1.2 結合型(ベンチェ省タインフー郡)
(1)飼育方法 (2)収穫
6.1.3 半集約型(ハイフォン市ティエンラン郡)
(1)飼育方法 (2)収穫
6.1.4 集約型(カインホア省カムラン郡)
6.2 稚エビの生産
(1)稚エビ生産の経緯 (2)生産技術 (3)ハッチェリーの急増
6.3 エビの流通
(1)稚エビの育成と出荷 (2)エビの休息場から養殖池へ (3)運搬業者(仲買人)からブローカーへ (4)冷凍加工場への出荷と輸出
むすびにかえて
参考文献

コラム 地域住民の生活を支えるマングローブ林に棲む生物

第7章 日本のエビの流通と消費
7.1 エビの需給動向
(1)世界有数のエビ消費国 (2)エビの国内生産 (3)世界から集まるエビ−輸出で外貨を稼ぐ途上国−(4)エビの在庫 (5)エビの輸出 (6)エビの需要
7.2 国別の輸入の動向−養殖推進と病気による撤退−
7.3 消費の動向
7.3.1 エビ類の用途−種類とサイズ−
7.3.2 エビ消費の地域差−多い地域と少ない地域−
7.4 流通と価格
7.4.1 輸入冷凍エビの流通機構
(1)流通の中心はエビ問屋 (2)一次問屋と商社のつながり (3)エビ卸売会社とその業績 (4)一次問屋・中央卸売市場からの流れ
7.4.2 トレイパック加工−エビの規格化と市場の拡大−
7.5 1980年代エビ市場のまとめ
(1)高度経済成長と大量輸入 (2)輸入増大による国内外の問題
7.6 1990年代の動向−日本の景気に左右されるアジアのエビ経済−
7.6.1 東南アジアでのエビ養殖の展開
(1)台湾から始まったブラックタイガー養殖 (2)病気の蔓延と土地収奪型養殖
7.6.2 円高による日本の需給の増大 
(1)購買力の増大 (2)消費量の増大 (3)現地価格の高騰による生産増大 (4)需給曲線による解析
7.6.3 エビ輸入の問題−価格暴落、資源乱獲、環境破壊−

付章 エビ漁業と環境認証制度−MSC(Marine Stewardship Council,海産物管理協会)の役割−
1.要約
2.変わる商業漁業への目
3.エビ漁業と科学
4.エビ生産と世論
5.長期的に持続可能なエビトロール魚業に向けて
6.ラベリングの役割−供給と需要−
7.認証の役割
8.MSCの創設
9.MSC魚業評価プロセス
10.漁業評価−技術的な側面−
11.MSCと貿易
12.エビ漁業が挑戦すべきこと
13.ある種の思い込みに対処する−エビ魚業は認証できるか−
付録 MSCについて
参考文献

索引

このようなエビ養殖の技術と資本の移転は、各国の水田や魚類養殖池、そしてマングローブ林を開墾してエビ養殖池を作ることによって行われた。しかしそれらの多くの養殖池は数年使用されるとウイルス病の蔓延によってエビ養殖が撤退するということを繰り返した。このためエビ養殖業者は、常に新天地を求めて各国に進出し続け、広がっていったのである。このようなエビ養殖は、「先進国はマングローブの破壊を通じての安価なエビを輸入している」と批判されるようになった。タイ国ではマングローブ林の多くが伐採されてエビ養殖池に使用され、その後放置された池が多く見られる。エビ養殖池として使われず放置されたところはマングローブの回復も遅く、荒廃した土地が残った。
以上のように、東南アジア地域でのエビ養殖の展開は、種苗採集技術の確立がきっかけとなって、土地生産性の高い処女地でのエビ養殖−土地収奪型養殖が展開していった。エビ養殖業者にとって東南アジアには安い土地が幾らでもあったのである。多くは3年以上使った養殖場は疲弊し、ウイルス感染の度合いが強くなる。そのために養殖場の防疫に資金をつぎ込むより、新しい養殖場を開拓した方が有利なのである。

フェアトレードという言葉を見たとき 「また胡散臭いものが・・・」と思ったものですが、よくよく見ると「あ〜、そりゃ大事だね」と改心しました。あてずっぽうで物事考えちゃだめだな「てへっ」と思いました、なかなか直らないのだけどもね。