呪医の末裔―東アフリカ・オデニョ一族の二十世紀 松田素二 講談社(2003/12)


目次-------------------------------------------
はしがき―ある一族の20世紀


プロローグ ミレニアムの暗い幕開け
3人の孫の死     埋葬前の諍い    アノンドの希望と絶望    カドゴの結婚生活    カドゴの死    オデニョ一族の苦悩


第1章 動乱の西ケニア―オデニョ一族のはじまり
母子の旅たち    オデニョの幼少時代    母オガと呪薬    ゲハヨ一族とのトラブル    オデニョ来住以前の南マラゴリ社会    戦士オンビサ    白人来訪と西ケニアの植民地支配    南マラゴリ制圧作戦


第2章 白い世界との出会い―呪医オデニョの葛藤
メンゲクランの立ち上げ    初めての出稼ぎ体験    植民地統治の技法    賃労働への誘導     白い都市への幻滅    第1次世界大戦と西ケニア    呪医への道    白い神への憧憬


第3章 ミッションボーイの行く末―オグゾソの夢
村の秀才少年    マラゴリとキリスト教    宣教師という出世街道    教会脱出と挫折    幻の民の再統合―晩年の夢


第4章 屋敷勤めのダブルスタンダード―ケヤの遍歴と達観
外世界への憧れ    世界恐慌の影響と人狩りブローカー    はじめての異文化経験    村の男の結婚作戦    英軍基地での出稼ぎ生活    白人のサーバントとして    ケニアのキクユ問題    サーバント文化の二重倫理


第5章 サーバントから職人世界へ―エブガの漂泊
漂泊気質    異郷のなかの故郷    サーバントという苦行    マウマウ時代    ペンキ職人になる    牧師からふたたびペンキ職人に    死に場所としての村


第6章 白い軍隊への志願―ムラゴの新たな故郷草創
出稼ぎ職業としての兵士    白いテクノロジーの魅力    第2次世界大戦とケニア    ビルマ戦線とアフリカ兵    復員と移住の決意    順風満帆からの暗転    ナンディ移住のリスク    新たな故郷への決心


第7章 独立ケニアの出稼ぎライフ―ソバとナイロビ単身男性社会
ナイロビ在住青年会長    公務員のはしくれに    独立の甘い夢破れ    単身男性文化の功罪    ナイロビの互助講    単身男性文化の崩壊と引退


第8章 構造調整時代の悲鳴―オディンガとアンビチェ兄弟の岐路
2人の兄弟    Uターン組の出現   アンビチェの夢    構造調整という名の毒薬    私化された互助講    ナイロビ居住形態の変化     闇の中のナイロビ暮らし


第9章 村のメシア―小オデニョの信仰共同体
もう1人のオデニョ    小オデニョと父マガガの不運    教祖オリパとの出会い    オデニョの異変     信仰共同体の再興と試練    セックス否定の摩擦    政治家される信仰実践    大オデニョの道


エピローグ 絶望のなかの光明―オデニョ一族の21世紀
幼子の死    持たざる者の知恵    憎悪と友愛を生き抜く    同時代の伴走者として


あとがき
文献リスト

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ソバたちは妻子を、ケロンゴ村に残して来ているのだが、ナイロビでも「ガールフレンド」をゲッドする場合が多い。たいていは、夫の暴力がイヤで子どもを連れてナイロビに逃げてきた女性や、ナイロビで子守やハウスガールとして働く姉や母を頼って出てきた女性が、「ナイロビ妻」の予備軍となった。彼女たち(の父親)に対して、「婚資」を支払うことも、その交渉をすることもないので、彼女たちが正式の、「妻」になることはない。それゆえに関係の持続性は不安定だが、彼女たちは子どもを産み、長期間の家族生活を営むことで、村の「本妻」に対抗するようになる。

巴マミの平凡な日常でみるリアル世界。わかりきった事を書くことは非常に重要である。