ミャンマー土着ムスリム―仏教徒社会に生きるマイノリティの歴史と現在

ミャンマー土着ムスリム―仏教徒社会に生きるマイノリティの歴史と現在 斎藤紋子 風響社(2010/11/10)
目次----------------------------------------------------------------
はじめに


① 仏教徒社会のなかのムスリム
1 ミャンマーにおけるムスリム
2 インド人移民の増加―植民地時代
3 インド系であること、ムスリムであること―ミャンマー社会との関わり


② バマー・ムスリムという主張とその背景
1 バマー・ムスリムとは
2 バマー・ムスリム意識の高まり―インド人ムスリム増加の中で
3 歴史叙述にみられる特徴


③ 現代のバマー・ムスリム―組織活動からみる彼らの意識
1 ミャンマー社会へのアピール
2 土着民族としてのバマー・ムスリム
3 過去を学んで現在を知る―歴史教育の重視


④ 新しい世代に向けた教育―イスラームセンター夏期講習
1 夏期講習の概要と目的
2 民族と信仰
3 ミャンマー社会におけるバマー・ムスリムの活躍


おわりに


注・参考文献

                                                                                                                            • -

この具体例も当然のことと言えばその通りであるが、やはりミャンマーで民族と信仰を混乱している現状を反映した解説といえる。というもの、バマー・ムスリムにとって、両者の区別は生活の細やかな側面に直接影響する重大な関心事であるためだ。この混乱は実際に国民登録証発行の際にしばしばみられ、特にバマー・ムスリムは民族がバマーで宗教をイスラームとしているものの、国民登録証を発行する役人はこれを認めない。バマー(ビルマ民族)であれば宗教がイスラームというのはあり得ない、イスラームなら民族にはインド系民族が含まれなければ国民登録証の発行はできない、などと言われる現状にある。本来であればこの具体例を示して解説したい相手はミャンマー政府および国民登録担当の役人であろうが、現政権下ではそうした機会はほぼ望めない。とはいえ、役人の説明をそのまま鵜呑みにされては困るので、これから将来を支えていくバマー・ムスリムの若者には、民族と信仰は別のものであるという考え方を見につけさせようという意図があらわれている。