工学の歴史:機械工学を中心に

工学の歴史:機械工学を中心に 三輪修三 筑摩書房(2012/1/10)
目次----------------------------------------------------------------
まえがき


1 古代の機械技術と技術学―紀元前5世紀から後9世紀まで
1.1 古代社会と技術文化の概要
1.2 古代中国の機械技術と技術思想
科学と技術における中国の先進性
高度な技術集団―墨子の技術と技術思想
『周礼考工記』―現存する世界最古の技術書
漢・唐代の精巧機械―張衡の地震計と一行の天文時計
1.3 古代ギリシャ・ローマの機械技術と技術学
シュラクサイのアルキメデス―機械学と静水力学の始祖
アレキサンドリアのヘロ―科学と技術の百科全書家
ウィトルウィウス―西洋ルネサンスに影響を与えたローマの建築家
1.4 イスラム世界の機械技術書


指南車―世界最古のサイバネティック機械


2 中世の機械技術と技術学(10-14世紀)
2.1 中世社会と学術・技術文化の概要
2.2 文化の華開く中国―宋代の技術と技術学(10-13世紀)
沈括の『夢渓筆談』―宋代のすぐれた科学・技術文献
蘇頌の天文時計―水運儀象台
2.3 中世ヨーロッパ―学術と技術の発展(12-14世紀)
運動科学の発展―オクスフォード学派とパリ学派
オクスフォード・マートン学派
ビュリダンとオレム―パリ学派の運動理論
中世の産業革命と機械技術(12-14世紀)
建築家ヴィラール・ド・オヌクール
日常生活への機械の導入―技術思想の変化
2.4 社会不安と軍事技術の発達(14、15世紀)―中世からルネサンス


ゴシック大聖堂(カテドラル)の構造力学


3 ルネサンス期の機械技術と技術学(15、16世紀)―技術と科学の結合
3.1 ルネサンス期の社会と学術・技術文化の概要
3.2 軍事技術の隆盛―戦争に明け暮れるルネサンス
軍事技術者インゲニアトールの出現
レオナルドの先駆者たち
3.3 ルネサンス期の技術学
レオナルド・ダ・ヴィンチと技術学
タルターリャの『新科学』―機械学と数学の結合
3.4 ルネサンス期の主な技術書
ビリングチオの『ピロテクニア』
アグリコラの『デ・レ・メタリカ
べッソンの『機械図説』
ラメッリの『種々の巧妙な機械』


イタリアの歴史上有名人の呼び方―レオナルドかダ・ヴィンチ


4 動力学の誕生と発展(17世紀)―ガリレオからニュートンまで
4.1 17世紀のヨーロッパ社会
4.2 技術の発展と近代科学の誕生
4.3 動力学の誕生と発展
ガリレオ―機械学と動力学の芽生え
『レ・メカニケー』(機械の学問)
『新科学対話』―材料強度についての考察
ホイヘンス―動力学への貢献
フック―弾性の発見
ニュートン―動力学の集大成


マリン・クロノメーターの開発―経度測定への戦い


5 動力学の展開(18世紀)―解析力学の完成
5.1 18世紀のヨーロッパ社会と学術文化の概要
5.2 科学の研究機関―科学アカデミーの成立
5.3 動力学の展開―「ニュートンの力学」から「ニュートン力学」へ
ダニエル・ベルヌーイ―数理物理学の創設者
オイラー―力学原理の確立
ダランベール―『動力学概論』と拘束運動
ラグランジュの『解析力学』―解析力学の完成


ダランベールの原理について


6 産業革命と近代エンジニア(18、19世紀)
6.1 産業革命を引き起こしたもの
6.2 動力革命、蒸気機関と動力水車の発展
実用蒸気機関とその発展
スミートンによる動力水車の出力計測実験
6.3 工作革命、精密工作を可能とした技術
マザー・マシン、工作機械
寸法の精密測定と、機械要素の標準化
測長期の発明
ねじの標準化
6.4 近代エンジニアと技術者団体の成立
スミートンと民事技術者協会
ジョージ・スチーブンソンと機械技術者協会
6.5 王制フランスの土木技術と技術学
王制フランスの大土木事業
動力水車と水力学の発展
6.6 王制フランスの技術学校と技術エリート


機械の百科全書、ロイポルトの『機械の劇場』


7 エコル・ポリテクニク―工学と工学教育の誕生
7.1 フランス大革命とエコル・ポリテクニクの創立
エコル・ポリテクニクの創立への道
エコル・ポリテクニクの教育
7.2 エコル・ポリテクニクの群像―工学の誕生
モンジュ―近代図学の創始者
カルノー父子―機械学と熱力学への貢献
ラザール・カルノー(大カルノー)     サディ・カルノー(小カルノー
クーロン―多才な軍人技術者
フーリエ―熱伝導の研究
その他の人びと―アシェット、ラプラス、ほか
7.3 エコル・ポリテクニクが残したもの


フランスの名門カルノー家―大臣や大統領を幾人も出した家柄


8 近代機械工学の夜明け
8.1 鉄道と近代造船のインパクト―機械技術のテイクオフ
鉄道と機械技術
近代造船と機械技術
8.2 黎明期の機械工学者たち
ポンスレ―工業力学への貢献
ランキン―近代機械工学の構築(実務と学理の融合)

ルーロー―機構学と機械運動学の創始者
その他の人びと―ナヴィエとレッテンバッハー


機械のさまざまな定義
韓非     ウィトルウィウス     ロイポルト     アンペール    マルクス     ルーロー


9 産業技術の発展と機械工学
9.1 産業社会の出現
9.2 機械文明の開花―アメリ
大量生産を可能にした技術革新
工作機械の発達
9.3 機械製図法と工業規格
9.4 機械工学の教育と研究の進展
拡大する高等技術学校
研究の細分化と専門家の出現


生産性向上のために始まった「金属切削の研究」


10 機械工学の専門分化と発展Ⅰ―材料力学、機械力学
10.1 材料力学の発展
梁の弾性理論の展開
弾性理論の確立と展開
材料強度学・破壊力学の展開
材料力学の名著・名教科書
10.2 機械力学の発展
回転軸系の振動問題
機械系の動力学問題
機械系の動的安定問題     非線形振動     不規則振動
機械振動学の名著・名教科書


リバティ船の脆性破壊と破壊力学の誕生


零戦と新幹線―航空機翼のフラッター振動と列車の蛇行動への挑戦


11 機械工学の専門分化と発展Ⅱ―流体工学、熱工学
11.1 流体工学の発展
近代流体力学と水力学のはじめ
応用流体力学の発展
航空機の時代―高速気体力学の誕生と発展
流体工学の最近の動き
流体工学の名著・名教科書
11.2 熱工学の発展
熱力学の基礎概念の成立
熱原動機と熱工学の並行的発展
熱物性の研究
伝熱工学と燃焼工学の発展
熱工学の名著・名教科書


新聞の3面記事から始まった沸騰熱伝達の研究―「抜山カーブ」のこと


トライボロジー事始め、流体潤滑理論の誕生
12 近代日本―機械工学の導入と定着
12.1 江戸という時代―文化の高まり
12.2 江戸時代の機械技術と機械学
江戸時代中期の機械技術―和時計とからくり
幕末期―西洋近代機械工学の受容
アヘン戦争の衝撃と幕府の対応     西洋近代技術の研究・教育機関の開設
12.3 幕末・維新期の主な機械工学書
箕作阮甫訳『水蒸船説略』
沼津兵学校と『蒸気器械書』
12.4 洋式工学教育の開始―ヘンリー・ダイアーと工部省工学寮
12.5 日本の機械工学の離陸
工学系学術団体の発足
機械学会の発足と日本人工学者の自立
12.6 日本の機械技術・機械工学の発展―研究所ブームと重工業時代


中国渡来の漢訳理工学書とその役割


13 機械工学の現在と未来
13.1 第2次世界大戦の技術革新
13.2 機械の先端技術と機械工学の現在
現代の先端機械技術
機械工学の現在
13.3 技術を取り巻く社会環境の変化
13.4 新時代のキー・ワード―「人間」
13.5 未来に向かって
技術をみる思想
文理シナジーが拓く未来


クランツバーグの法則―コンテクストの中の技術


14 終章―工学史への招待
14.1 まとめ―歴史に見る機械と機械工学の変遷
14.2 技術と科学と工学と
技術というもの
技術と科学
技術と工学
現代工学の広がり
14.3 工学史への招待
工学の成り立つ場―技術者教育の過去と現在
近代技術者教育の誕生と展開      現代の技術者に求められるもの
工学史のすすめ
工学史について     工学史を学ぶ意義


機械技術史・機械工学史年表

参考文献

あとがき

事項索引

人名索引

                                                                                                                              • -

 これらの工学問題は鉄道によってはじめて顕著になったものである。この時代の技術者・工学者たちは新しい機械の開発と頻発する事故をばねとして、数々の賞賛と非難を受けながら問題の解決に立ち向かった。材料力学や機械力学など、機械工学の基礎的な工学はここから次第に形をなしていった。機械工学は彼らの汗と涙から出来上がったといっても過言ではない。
図8.2 線路上で列車を待つ死神(ジョン・テニエルによる鉛筆画)