震災復興 欺瞞の構図

震災復興 欺瞞の構図 原田泰 新潮社(2012/3/16)
目次----------------------------------------------------------------
序論・人を助ける復興策とは?


第1章 大増税の口実に使われる大震災
物的資産毀損額16.9兆円の誤り     結局、いくら壊れたのか      日本人一人当たりの物的資産は966万円      考慮すべき減価償却     自治体の推計から想定される被害額     負債金額からの推計     結語


付論 政府の数字に気をつけろ―物的資産の毀損額
内閣府の推計16.9兆円の誤り     日本政策投資銀行の被害推計の見方     新品で補償するのは不公平     過大な被害推計     民間企業ストック額の謎


第2章 過去の震災復旧対策の浪費ぶり
奥尻島では島民一人当たり1620万円使った    阪神淡路大震災は被災者一人当たり4000万円     ゴーストタウンの建設に使われた復興費     浪費だった神戸市のプロジェクト     中越地震はリーズナブルな復興     仮設住宅という高コスト支援策     コスト感覚が欠如した復興計画     戦争中もコストカットを主張したトルーマン    結語


第3章 政府や県が無駄遣いに積極的な理由
国は何に使おうとしているのか     羅列された無関係な対策    2012年度予算案での復興費     狙い撃ちされた富裕層     復興庁と復興特区     自治体の望む「復興」     費用はどうなるのか    高台移転は高コスト     復興予算は関係ないことに使われる     復興を遅らすだけの議論     農業と漁業の相違点     漁業権とアメリカ占領軍の気遣い     愚かな「創造的復興」     インフラ建設に時間がかかる理由    工事の遅延が最大の目的     意図的に遅らさせる震災復興     結語


第4章 最も安上がりで効果的な復興策
組織やビジョンは必要か    東日本復興のツボ     復興と個人財産の復旧     国民一人一人の力を信じよ     進む人口減少      安上がりな復興計画      被害が大きかったのは新興市街地     個人財産復活とモラルハザード     個人への公的援助は問題か     復興資金の調達方法     ゴーストタウン効果と円高効果     復興増税長期化の奇妙さ     これまでの赤字はどうする     税と社会保障の一体改革の議論はずれている     デフレ脱却に役立つか     結語


第5章 過去の大震災に学ぶ
震災復興についての6つの論点     デフレが続いた関東大震災後     デフレにしながら個別企業を助けていた    デフレの害悪     成功したインフラ再建     帝都復興院     石橋湛山の帝都復興院論     地盤低下が収まらなかった兵庫県     天変地異の後はデフレが起こる     阪神淡路大震災の被害と復興政策     円高への対処法      結語


第6章 原発事故の教訓
原発依存のルーツ     国家戦略としての原発     植民地との類似性     取り込まれる規制者     情報は規制される側にある      ウソをついているうちに真実が分からなくなっている     安くなかった原発     効率重視が理由か     本当の発電コスト     原発推進国ほど安いのか      原発を使うほど安くなるのか      電力料金低下の理由     CO2問題への対応     利己主義という気概      他人の願望と自らの犠牲     牛肉よりも稲藁が安い     企業と政府の責任    結語


終わりに

                                                                                                                            • -

 個人財産の補償を始めれば際限なくなるという人もいる。しかし現実には、それをしないことが際限のない復興費の拡大をもたらしている。私の案では、復興に必要な費用は4兆円である。個人財産の補償をせず、公共事業で復興を図ろうという案では19兆円から23兆円のコストがかかる。すでに5倍から6倍近い費用をかけようというのだ。こちらのモラルハザードの方がより酷い。個人の財産の復活であれば、誰が得しているかが分かる。それがモラルハザードに限度を与える。誰がどれだけ得をしているか分からない公共事業では、モラルハザードには限度がない。