市場を創る―バザールからネット取引まで

市場を創る―バザールからネット取引まで ジョン・マクミラン(著)瀧澤弘和(翻訳)木村友二(翻訳) NTT出版(2007/03)
目次----------------------------------------------------------------


第1章 唯一の自然な経済


第2章 知性の勝利


第3章 地獄の沙汰も金次第


第4章 情報は自由を求めてる


第5章 正直は最善の策


第6章 最高札の値付け人へ


第7章 サァ、いくらで買う!


第8章 自分のために働くときには


第9章 特許という困惑


第10章 なんびとも孤島にあらず


第11章 公衆に対する陰謀


第12章 草の根の努力


第13章 他人のお金を管理する人々


第14章 競争の新時代


第15章 空気を求めて


第16章 貧困撲滅の戦士たち


第17章 市場の命令


謝辞


訳者あとがき


参考文献


索引

                                                                                                                              • -

スポーツの世界同様、ビジネスの世界でも、行儀よく振舞うインセンティブは公式ルールと非公式のルールの両方に依存している。裁判所には盲点があるし、煩雑なものとなる可能性がある。市場の参加者は、自分たち自身の自己実効的メカニズムを発展させることによって契約法を補っている。

 私的所有の制度は存在しないが、市場をかなりうまく機能させるような代替的メカニズム―官僚的行政に基礎を持つ―が、中国には存在したということである。法的に定義された所有権がないということは、必ずしも財産権がないということではないようである・・・少なくとも、自作農業の単純な取引に対しては。
 パズルの主要な部分がまだ解決されずに残っている。中国の官僚たちは、農民に対して自らの権力を濫用する誘惑にどうして負けなかったのだろうか、あるいは、ヒエラルキーはどのようにして、この誘惑を抑えたのだろうか。この答えは、おそらく特定の時間と場所ということにある(したがって、中国の解決策を他の国がすぐ適用できるというようなインプリケーションは存在しない)。1980年代から1990年代を通じて、中国の政治的状況は安定していたが堅固というほどではなかった。共産党政府は、対抗勢力こそ存在しなかったものの、それがかつて持っていたような正統性をすべて失ってしまった。改革期の中国では、共産主義は名前だけのものになっていた。共産党政府の政府としての正統性と、将来のいかなる政治的反対をも予め阻止する能力は、経済成長を成し遂げることにかかっていた。訒小平政府の高官たちは経済学を十分に理解しており、成長には市場が必要であり、市場には保証された財産権が必要であることを認識していた。共産党は高い規律を持った組織を保持しつづけ、そのため、下級レベルの役人たちの自己利益追求的な行動を防ぐことが可能だった。国は、農産物産出量の成長を維持するように地方の役人を動機づけた。そのために、地方の役人にボーナス支払いや昇進で報いると同時に、産出量の目標に達しなかったときには解雇することも行った。極端な不正行為に対する制裁は厳しかった。汚職で有罪になった役人は処刑される可能性もあった。このような党の規律の結果として、官僚的コントロールによって提供された財産権プラットフォームは、場当たり的ではあったものの、市場の力がかなりうまく働くのには十分なほど確かなものだったのである。
 このシステムは1990年代までに緊張の兆しを見せ始めた。農民たちは、自分の土地を売ったり、賃貸ししたりできないまま、ますます非経済的になってくる小さな区画を耕しつづけるよう義務づけられていたからである。農民たちが地方の役人によって課されている高い税金と料金に反対する中で、ときに暴力を伴う反対運動が発生した。ある農民は言った「郷、県、市のあらゆるレベルに腐敗した役人がおり、彼らは自分たちの取り分を多くしようと協力している」しかし、注目すべきは、役人が権力を濫用したこではなく、むしろ濫用が大部分抑制されていたことにある・

知的財産は、イノベーターに報酬を与えることとアイディアの完全な利用を許すことという、相互に両立しない目的にかかわるため、知的財産保護の普遍的な理想水準というものは存在しない、強い知的財産か、弱い知的財産かは状況によって変わってくるのである。

 要するに、漁業の完全な管理は困難である。固定的で安定的な漁師の共同体においては、社会的制裁に支えられた行動規範が漁を維持可能な程度に制限する可能性がある。しかし、ほとんどの漁場では漁師の新規参入が可能で、そのような安定的な共同体が成立しないから、政府による監視がなければひどい乱獲となる。他方、政府による漁の規制は歪みを引き起こすだけで、通常、どのような場合にも乱獲を回避できない。実行可能な最善の解決策は漁獲数量割当である。財産権を創出することで、数量割当は魚をどれだけ獲るかという漁師の意思決定の外部性の問題を解決する。これはもっとも市場指向的な解決策である一方、政府による広範な監視がある場合のみ実行可能なものとなる。

明らかに、汚職があるよりも汚職がないほうが市場はより良く機能する。しかし、汚職が存在することを所与とすれば、機能する市場が汚職と共存できるかどうかは汚職をコントロールするルールに依存している。インドネシアにおいて市場が機能したのは、国家が無制限の汚職をコントロールすることができたことによるものであり、汚職が通常持っているような投資抑制効果に歯止めをかけていたからである。汚職が存在することを所与とすれば、すべての人が無制約に汚職できるよりも、汚職が独占化されているほうが市場にとって害が少ない。

価格改革は異例な方法で行われた。計画経済下の国有企業は生産物を固定価格で国に売ることを求められていた。改革においても、計画経済のこの側面は維持されたが、追加的な生産物を生産して市場で売ることが国有企業に許された。二重価格制度が行われ、その下で、市場価格は通常、公式価格よりもずっと高くなった。国有企業が市場で販売する割合は徐々に増加した。
 二重価格の下では、総生産量が国の割当量を上回る限り、どれだけ生産し、どの投入物を使い、どの投資を実行するかといった企業の意思決定は、国による産出物割当の影響を受けなかった。このような意思決定において重要だったのは、追加的生産物の価格、つまり市場価格だった。そのため、斬進的な価格改革ではあったが、二重価格は即座に効果をあげ、企業が市場指向になるよう促した。二重価格はショック療法におけるような連鎖的崩壊を避けることができた。国有企業に対して、市場における追加的生産物の販売や追加的投入物の購買を認めることで、既存の事業方法の安定した土台の上に新しい企業間関係を発展させていくことが可能となった。
 しかし、痛みも徐々に増加してきた。二重価格は、重要な役人の子息のように有力なコネを持っている人々による不法な利得行為を可能にした。低い計画価格で財を獲得し、より高い市場価格で販売するのである。このような腐敗したやり方に対する怒りが、天安門広場での1989年のデモに火をつけた要因の1つであった。

ゆるゆり♪♪3話予告 京子「いいと思うんだけどなー、てうが。このアニメをご覧のお客様の中にお医者さんはいませんか?さっそく明日から流行らせよう!使用料は無料だよんっ♪」