貧困ビジネス被害の実態と法的対応策

貧困ビジネス被害の実態と法的対応策 日本弁護士連合会貧困問題対策本部(編集) 民事法研究会(2011/09)
目次----------------------------------------------------------------
はしがき


第1章貧困ビジネス被害とは
1 貧困の急増と貧困ビジネス

2 消費者被害と貧困ビジネス被害
(1)消費者法の考え方
(2)市場に登場する貧困者像
(A)経済的貧困     (B)社会的貧困     (C)貧困の再生産と格差の拡大    (D)貧困であるがゆえのさまざまな制限

3 悪質な貧困ビジネスの横行とその類型化
(1)従来型貧困ビジネス
(2)新規貧困ビジネス
(A)無料低額宿泊所サービス     (B)追い出し屋     (C)労働者派遣法違反の人材派遣     (D)医療関係     (E)保証人ビジネス     (F)臓器売買     (G)戸籍売買

4 貧困ビジネス被害の発生原因と特徴
(1)行政サービスの不足部分へつけ込む貧困ビジネス
(2)貧困者の無知・無抵抗を狙う
(3)外部からの遮断
(4)「合法」「適法」を仮装する

5 法律実務家の役割と課題


第2章 貧困ビジネス被害の現状と社会的背景
Ⅰ 居住をめぐる貧困ビジネス
1 住まいと貧困

2居住をめぐる貧困ビジネスの類型
(1)「ゼロゼロ物件」業者
(2)家賃保証会社―フォーシーズなど
(3)野宿者を狙う宿泊所ビジネス
(4)生活保護費を搾取するアパート

3 安心できる住まいの確保に向けて


Ⅱ 貧困ビジネスとしての労働者派遣
1 労働者派遣法の経緯

2 派遣労働者の貧困
(1)Aさんの場合
(2)Bさんの場合
(3)Cさんの場合

3 貧困ビジネスとしての労働者派遣


コラム:釜ヶ崎を基点とした日雇い労働者の就労実態〜長年の取組みのおかげで踏みとどまっている〜
1 総論
2 「オールド日雇い派遣」の場合
(1)労働者数     (2)就労ルートや労働環境     (3)懸念はある
3 「ニュー日雇い派遣」の場合
(1)流入労働者数     (2)通過型     (3)労働環境
4 最後に―生きる力をどうつけるかがポイント


Ⅲ 医療をめぐる貧困ビジネス
1 はじめに

2 「貧困ビジネス」としての山本病院事件

3 連携し成長する「行路病院グループ」

4 1980〜1990年代の「行路病院」事件

5 「医療貧困ビジネス」の背景


Ⅳ 金融をめぐる貧困ビジネス
1 貧困と多重債務

2 貧困ビジネスとしての消費者金融信販

3 違法金融によるさらなる多重債務と貧困の醸成

4 法律専門家の役割
(1)貧困問題の解決
(2)多重債務問題の重要性
(3)「生活再建」の意識を


コラム:債務整理をめぐる法律家による2次被害


Ⅴ 風俗・キャバクラ関連の貧困ビジネス
1 キャバクラの違法営業とトラブル処理

2 違法DVD店長という仕事

3 援助交際デリバリー


Ⅵ 保証をめぐる貧困ビジネス
1 はじめに

2 保証人被害の概要
(1)分類
(2)就職保証被害
(A)被害の概要     (B)被害の生じる背景
(3)賃貸借契約保証被害
(A)被害の概要     (B)被害の生じる背景
(4)進学保証被害
(A)相談の概要     (B)被害の生じる背景
(5)保証人紹介登録被害
(A)事例の概要     (B)相談事例への対応の実情     (C)賃貸借契約をめぐる保証人の責任

3 おわりに


第3章 貧困ビジネス被害の実情と法的対応策

Ⅰ 戸籍売買偽装の養子縁組・国際結婚の当事者となる
1 戸籍売買とはどのようなビジネスか

2 被害事例

3 弁護士に依頼するに至った経緯

4 戸籍を元に戻すために①―養子縁組を無効にする方法
(1)事前調査
(2)養子縁組無効確認調停の申立て
(3)養子縁組無効確認訴訟
(4)判決に基づく戸籍訂正の申立て

5 戸籍を元に戻すために②―国際結婚を無効にする方法

6 身に覚えのない借金をなくすために
(1)債務状況の調査
(2)債務不存在確認の交渉
(3)債務不存在確認訴訟
(4)破産

7 刑事告訴

8 民事法律扶助の活用

9 戸籍法2007年改正


Ⅱ 追い出し屋被害
1 「追い出し屋」とは
(1)追い出し屋被害の実情と背景
(A)執拗な取立て     (B)使用の阻害・生活動産の拠出処分    (C)追い出し屋被害が多発する背景
(2)家賃債務保証業者とは
(3)管理業者・サブリース業者による「追い出し」

2 「追い出し」被害救済の実務
(1)「追い出し」状態の解消
(A)業者・賃貸人に対する解錠要求     (B)仮処分の申立て     (C)「追い出し」被害者の住居の確保
(2)取立てや「追い出し」行為に対する慰謝料請求
(3)動産の処分に対する損害賠償請求
(4)賃貸人の責任

3 「追い出し屋」規制法案の制定へ
(1)追い出し屋規制法案をめぐる情勢
(2)追い出し屋規制法案によって何が変わるのか
(A)家賃債務保証業の規制     (B)不当な取立て行為の禁止     (C)セーフティネットの構築     (D)家賃等弁済情報提供事業(家賃滞納データベース)

4 賃貸住宅における公的役割


Ⅲ 無料低額宿泊所商法ホームレスから生活保護費のピンハネ
1 無料低額宿泊所の現状
(1)無料低額宿泊所施設数と入所者数の推移
(2)国のホームレス対策と無料低額宿泊所
(3)無料低額宿泊所に関する平成15年社会・援護局長通知
(4)都道府県・指定都市・中核市調査
(5)社会福祉法上の無料低額宿泊所の位置づけ
(A)1種事業か2種事業か     (B)1種事業と2種事業の違い     (C)1種事業に対して強い規制が行われる理由     (D)2種事業に対する規制が緩やかである理由     (E)1種事業と2種事業に共通の規制
(6)1種事業としての無料低額宿泊所と2種事業としての無料低額宿泊所
(A)1種事業としての無料低額宿泊所     (B)2種事業としての無料低額宿泊所      (C)1種事業としての無料低額宿泊所と2種事業としての無料低額宿泊所との区別
(7)無料低額宿泊所に対する公的規制のあり方
(8)国(厚生労働省)の責任

2 「無料低額宿泊所商法」の被害事例と救済方法
(1)被害事例1
(A)野宿者に甘い言葉をかけ施設へ     (B)劣悪な設備と食事、保護費の大部分をピンハネ
(2)被害事例2
(A)野宿者に生活保護を申請させて関連会社の賃貸アパートへ     (B)保護費が入る口座を強制管理し米と2万円余だけを配る
(3)被害救済と法的責任追及の方法
(A)「無料低額宿泊所」業者に対する法的責任追求     (B)国家賠償請求(国と自治体に対する責任追求)

3 無料低額宿泊所問題と特定商取引法の活用
(1)はじめに
(2)特定商取引法の適用可能性
(A)営業所等以外の場所での契約     (B)「特定顧客」については営業所等で契約がされた場合を含む    (C)契約対象商品・役務    (D)適用除外
(3)特定商取引法による規律
(A)主な行政規制     (B)民事規定    (C)特定商取引法の適用に関する留意点


Ⅳ 医療をめぐる貧困ビジネスに対する法的救済
1 医療をめぐる貧困ビジネスの特徴
(1)大和川病院・安田病院事件
(A)事実経過の概要     (B)安田病院では何が行われていたか
(2)山本病院事件
(3)医療をめぐる貧困ビジネスの特徴

2 医療機関が収入を得るしくみ―医療費制度
(1)国民皆保険
(2)医療保険制度のしくみ
(3)診療報酬制度
(4)診療報酬制度のメリットとデメリット
(A)メリット     (B)デメリット

3 医療をめぐる貧困ビジネスのしくみと問題点
(1)医療をめぐる貧困ビジネスとは
(2)医療貧困ビジネスのしくみ
(3)問題点

4 医療貧困ビジネスに対してとりうる法的対応策
(1)民事上の手段
(A)身体     (B)被侵害利益     (C)「不必要な手術」か否か
(2)刑事上の手段
(A)傷害罪ないし業務上過失傷害罪での刑事告訴     (B)詐欺罪での刑事告訴
(3)行政上の手段
(A)生活保護法に基づく対応     (B)健康保険法に基づく対応     (C)医療法に基づく対応


Ⅳ 貧困ビジネスとしての違法金融の実態と対策―ヤミ金融・違法年金担保融資―
1 はじめに

2 ヤミ金融
(1)直接金融型(業者から被害者に対し、直接に融資を行うもの)
(A)登録貸金業者     (B)090金融     (C)システム金融(手形・小切手金融)    (D)保証料ヤミ金
(2)取引仮装型(実態としては金融だが、取引を仮装するもの
(A)家具リース・自動車リース     (B)チケット金融     (C)金貨金融     (D)レンタル時計店     (E)ヤミ金融の手口
(3)ヤミ金融対策
(A)具体的な対応策    (B)被害者の損害額
(4)銀行口座と携帯電話

3 年金担保融資
(1)違法年金担保融資
(2)質屋による年金担保融資
(3)公的年金担保融資
(4)信用金庫、信用組合農業協同組合等の年金担保融資

4 その他の違法金融
(1)整理屋
(2)クレジットカードの現金化
(3)紹介屋
(4)縁組屋


Ⅳ クレジットカード現金化商法
1 概要
(1)現金化の手法―「買取屋方式」と「キャッシュバック方式」
(2)ターゲットとなるのは資金需要者
(3)クレジットカード現金化商法の問題点

2 買取屋方式の概要
(1)典型的な手口
(2)その他の手口

3 キャッシュバック方式の概要
(1)キャッシュバック方式の流れ
(2)法的な問題点

4 クレジットカード現金化商法の利用者が被るおそれがある不利益
(1)カード会員規約違反(買取屋方式)
(2)刑法上の横領罪や詐欺罪(買取屋方式)
(3)支払不能による経済的破綻(買取屋方式・キャッシュバック方式)
(4)破産手続における免責不許可事由に該当するおそれ(買取屋方式)

5 クレジットカード現金化業者に対する責任追及
(1)買取屋方式における現金化業者の責任
(A)古物営業法上の責任     (B)刑法上の責任     (C)買取屋方式における販売店の責任
(2)キャッシュバック方式における現金化業者の責任
(A)景表法上の責任     (B)クレジットカード会社との間の加盟店契約違反
(3)まとめ

6 利用者の救済に向けて
(1)クレジットカード現金化商法を利用する人の特性
(2)利用者の救済へ向けた対策①―クレジット会社との関係
(3)利用者の救済へ向けた対策②―現金化業者との関係.......
(A)買取屋方式の場合     (B)キャッシュバック方式の場合

7 クレジットカード会社の加盟店管理の徹底と立法的解決の必要性


コラム:大阪いちょうの会の西成(釜ケ崎)での活動〜ヤミ金融被害の回復〜


Ⅶ 売春ビジネスの実態と対応策
1 日本の風俗ビジネスの特徴

2 売春に対する法的規制

3 貧困問題と売春
(1)A子さん
(2)B子さん
(3)C子さん
(4)D子さん
(5)E子さん
(6)貧困につけ込んで個人の尊厳を侵害する風俗ビジネス

4 風俗ビジネスの悪行・人権侵害行為の実態
(1)個室付き浴場は売春防止法12条違反①―大阪高判昭60・2・8(高検速報 昭60 282頁)
(2)個室付き浴場は売春防止法12条違反②―東京高判昭58・5・19(判時1088号148頁)
(3)売春あっせん(職業安定法違反、売春防止法違反)―岡山地判平14・6・14(裁判所ウェブサイト)
(4)強要罪売春防止法違反―神戸地判平16・12・22(裁判所ウェブサイト)

5 ルールなき社会の貧困と買春

6 売春業の餌食にされる女性たちへの対応策
(1)「相談できるところ」「生活場所を無料(あるいは安く)提供してくれるところ」を広報すること
(2)困っている女性に対して「救済する」姿勢を国にとらせること


Ⅷ 保証人紹介業被害の実情と法的対応策
1 はじめに

2 「保証人紹介業」とは

3 保証人紹介業による被害の実態
(1)保証人の紹介を申し込んだ者が受ける被害
(2)保証人として名義を貸した者が受ける被害

4 被害に対する対応
(1)保証人の紹介を申し込んだ者の被害への対応
(A)登録料などの返還請求     (B)解約手数料を要求された場合の支払拒絶      (C)更新手数料の支払拒絶     (D)保証人紹介サービス     (E)架空請求・不当請求
(2)保証人として名義を貸した者の被害への対応
(A)保証債務の負担      (B)保証人紹介事業者に対する保証債務の履行請求等

5 保証に関する法規定
(1)民法上の保証人
(2)身元保証
(3)賃貸借契約に関する保証、融資に関する保証

6 まとめ



資料

Ⅰ 貧困ビジネスをめぐる裁判例(要旨)
1 金融関係

2 居住関係

3 医療関係


Ⅱ 参考書式例
【参考書式例1】ヤミ金融に対する請求書
【参考書式例2】預金口座の不正利用に関する情報提供シート(財務局宛)
【参考書式例3】訴状(養子縁組無効確認請求訴訟)
【参考書式例4】無料低額宿泊所商法業者に対するクーリング・オフ通知
【参考書式例5】訴状(無料低額宿泊所商法業者に対する損害賠償請求訴訟)
【参考書式例6】病院に立入検査を求める申入書
【参考書式例7】訴状(貧困ビジネス医療機関に対する損害賠償請求訴訟)


Ⅲ 「無料低額宿泊所」問題に関する意見書(日本弁護士連合会)2010年


Ⅳ 大阪府被保護者に対する住居・生活サービス等提供事業の規制に関する条例(案)に対する意見書(大阪弁護士会)2010年


Ⅴ 大阪府被保護者等に対する住居・生活サービス等提供事業の規制に関する条例


編者・執筆者一覧


あとがき

                                                                                                                            • -

 ここでは、医療機関は、実際にかかった医療費の全額を公費(税金)から受け取ることになるので、医療保険を利用した場合に生じる患者の自己負担金部分について、未回収となることは想定されない。言い換えれば、医療機関にとっては、生活保護受給者に対して医療行為を行った場合、診療報酬が全額公費から支払われるため、確実な収入を見込むことができるのである。医療扶助は、医療機関から見れば極めて優良な債権である、といえる。
 このため、出来高払い方式の診療報酬制度と生活保護の医療扶助とを悪用すれば、医療機関は、莫大な利益を得ることが可能となる。すなわち、生活保護受給者である患者を、薬づけ・検査づけにすれば、診療報酬点数を稼ぐことができ、その点数から算出される診療報酬を公費から確実に回収し利益を得ることができるのである。
 医療貧困ビジネスは、こにように診療報酬制度のデメリットと医療扶助の優良債権性とに着目したビジネスなのである。

銀行口座・戸籍・社会保障費のハイジャック、等々深刻な犯罪の温床となっております。時間があるのならスリーパーを仕込むのは容易なのです。