女スパイ、戦時下のタイへ

女スパイ、戦時下のタイへ 羽田令子 社会評論社(2003/08)
目次----------------------------------------------------------------
プロローグ


第1章 スパイとして送りこまれる
告白     上陸     新しい任務     空襲     古井との出会い     拷問


第2章 進駐日本軍の模様
音楽会は割れた     訓練された君枝


第3章 君枝の活躍
夢は夜ひらく    抗日運動     古井の恋


第4章 南十字星の流れ
南十字星はいずこに     出稼ぎ女性      敗戦間際      終戦     収容所へ


第5章 逃亡それぞれ
辻大佐の逃亡     古井の逃亡      山奥での誓い


第6章 バンブァトン収容所の生活
人さまざまな日々     会いたくて      ホームシック


第7章 君枝タイ側のスパイに
解放されて


エピローグ


あとがき

                                                                                                                            • -

 その頃から、ビルマ方面から多数の邦人が国境を越え、タイ側になだれこんでくるようになった。殆どの人が破れぞうりか裸足で、粗末な衣服をまとっていた。身も心もぼろぼろになって辿り着いた人々を見て、これが我が同胞かと目を疑ったほどだ。軍属か商社員の家族がほとんどで、中には朝鮮人や日本人の女子挺身隊員(という名でかり出された従軍慰安婦)も混じっていた。
「何と、日本人が・・・」
「臭いなあ」
 通りを歩いて行く日本人の行列を見ながらタイ人たちは驚異と侮蔑の眼で見ていた。日頃、優越感を誇示していた日本人への複雑な思いがこめられている。
 バンコク在留の日本人の数は限られていたから、人手が足りなくて、君枝も日本人会の炊き出しに借り出された。長男を産んだあとなので、乳飲み児を家に置き、組長の家に集まっては、ビルマからの帰還者に差し入れるおにぎりを作った。
 そんな人々の口にはいろんな噂が飛び交った。
「××会社では書類を焼いているらしいよ。そろそろ準備しないと・・・」
「準備って?」
「逃げる準備ですよ。しっ・・・」
 難民の姿は、明日は我が身だった。
 一方、大本営発表のラジオ放送を聞くと、日本軍はいかにも勝っているように知らされていた。しかし人々は終戦が近いのではないか、と感知していた。負け戦なら残念だがその日をいつ知らされるか人々は不安な気持ちで待っていた。

Aチャンネルエンディング曲 はるかぜの化学『スイミン学習 チョークの音ひびく「し・と・や・か・に」とモールス 今はほら平和だよコロンブス、席替えだけで大騒ぎ 寝グセがミラクル笑う教室 スカーフとスマイルはまっすぐでいたいね♪』
2期はまだか〜??