ビオレンシアの政治社会史―若き国コロンビアの“悪魔払い”

ビオレンシアの政治社会史―若き国コロンビアの“悪魔払い”寺澤辰麿 アジア経済研究所(2011/12)
目次----------------------------------------------------------------
はじめに

 
序章 コロンビアの概要 
1 人口、民族、地勢、歴史など
2 地理的条件、人口の動態と社会経済構造
コラム 黄金郷伝説


第1章 ビオレンシアという社会現象とは? 
1 ビオレンシアの意味
2 ビオレンシアの分類


第2章 政治的ビオレンシア 
1 二大政党制の起源と特徴
シモン・ボリーバルの政治思想    サンタンデールの政治思想
2 政治的ビオレンシアの原因はなにか?
3 政治的ビオレンシアの個別要因
(1)1849年〜1886年自由党政権    (2)1887年〜1930年の保守党政権    (3)1930年〜1946年の自由党政権    (4)1946年〜1974年    ラ・ビオレンシアの発生    国民戦線協定の時代
4 コロンビアの政治史の特質
コロンビア政治史の特質     1991年憲法    ガビリア政権 (1)政治システムの改革 (2)経済改革 (3)麻薬マフィア対策 (4)ゲリラ組織との和平 (5)その他
コラム チャべス・ベネズエラ大統領を理解する鍵
コラム ガブリエル・ガルシア・マルケスの人物像


第3章 ゲリラ戦争と麻薬戦争 
1 極左ゲリラの出現
FARC     ELN     EPL
2 その他のゲリラ組織
M-19     MAQL     CNG
3 パラミリタリーの出現
4 コロンビアの麻薬生産と密売組織の出現
大麻マリファナ)    ケシ(ヘロイン)    コカイン (1)コカインの生産 (2)メデジン・カルテル (3)カリ・カルテル (4)コカの国産化 (5)プラン・コロンビア
5 FARCの勢力盛衰と麻薬
(1)FARCによるビオレンシア (2)FARCのコカインビジネス (3)パラミリタリーと政府との戦闘 (4)FARCと国際問題
6 コカインの生産構造とコカイン対策
(1)コカインの生産構造 (2)コカイン対策
7 ゲリラ戦争、麻薬戦争の勝算はあるか
コラム パイサのエピソード


第4章 一般犯罪としてのビオレンシア 
1 一般犯罪の原因に関する通説的見解
2 19世紀以前の一般犯罪の状況
3 20世紀以降の一般犯罪の状況
4 犯罪要因の理論的分析
5 貧困と満足度
6 一般犯罪に関する通説的見解の誤謬


第5章 ビオレンシアの“悪魔払い”

 
あとがき 
コロンビアの歴代大統領 
図表一覧 
参考文献

                                                                                                                              • -

1960年代後半以降、FARCELNなどのゲリラ組織が農村地域に勢力を伸張していく過程で、ゲリラ組織は武力闘争の継続に必要な資金を調達するため、農村の大土地所有者などにいわいゆる“革命税”を要求し始めた。この要求は1980年代まで続き、いくつかの地域では、大土地所有者や農民が自警団を組織してこれに対抗する動きが見られた。当時、コロンビアの農村地域では、ほとんどの市町村において政府の軍隊や警察が駐在していなかったため、1968年法律第48号により、政府が社会の秩序を維持するための活動に地域の住民を動員できるようにするとともに、これらの任務に要する訓練、武器の供与などの支援を行うことができることとされた。これが自警団組織の起源であり、政府の承認を受け、政府により訓練を受けた民兵による組織をパラミリタリー(準軍事組織)とよぶようになった。(注)政府の支援を受けたパラミリタリー組織は、1994年に制度化され政府から認知されたことによりその数が増加したが、人権団体からその不当な人権侵害を糾弾されたため、1997年に解体された。
 このような古典的パラミリタリーとは別に、1980年代、より強力で影響力のある新たなタイプの非合法武装組織であるパラミリタリーが、麻薬取引との関連で出現した。当時ゲリラ組織は、コカの葉の取引価格の10%から15%をいわゆる“取引税”という形で徴収していた。新たなパラミリタリーは、これに抵抗するために生まれた。コカインの取引が巨額の利益をもたらしたことから、麻薬密売組織は、農地を買収して自らコカの栽培を始めるようになり、一方土地所有者はゲリラの脅迫や革命税要求から逃れるため農地を手放したため、農地が大量に麻薬密売組織の手に移転した。
 この新たな麻薬関連農地所有者がゲリラの影響を排除するために麻薬収入を財源として武器を調達し、また農民をリクルートして英国やイスラエルの専門家を傭って訓練を施した。これが、農村の大土地所有者などと協調しながら、農村の新たな非合法武装勢力(パラミリタリー)となっていった。新たなパラミリタリーは資金が豊富で最新鋭の武器を調達できたため、ゲリラの革命税要求を拒絶し、ゲリラを打倒して、その地域からゲリラ勢力を排除する戦いを激しく展開していった。

Fate/Zero エンディングMEMORIA 「ああ 逆らえぬ運命めと知っても 怖くない心から信じている 静かに移り行く遠い記憶の中 君と過ごした証は確かにここにある 溢れ出す気持ちを教えてくれたから この世界が無くなっても私はそこにいる♪」