ボリビア移民の真実

ボリビア移民の真実 寺神戸曠 芙蓉書房出版(2009/10)
目次--------------------------------------------------------------------------------
序章 手紙


第1章 外地要員
海協連     新入農学士の意味     ドミニカ移民     ストライキのない労働組合


第2章 サンフアン日本人入植地
美女の降る町と牛車     道程130キロ     ダイナマイト道路     サンフアン温泉     馬     もの言わぬ人々      原生林


第3章 欺かれた移民
集団転住ムード     白い稲穂     選択     銃口     ここはボリビア


第4章 樹海の中で
米対胡椒     カメムシ     森林の中の米作り     サンフアンの農業     カメムシ落ちる      ダイナマイトのクリスマスイブ


第5章 作物模索と移民輸送
試験農場開設     作物導入     ブラジル横断     渡河


第6章 入植地の日々
農業の道筋     農業計画     活動     休日     混乱


第7章 検証・国の責任
振興対策調査     官製農業改善の手順     提言迷走     調査の効用     移住地適地調査     サンフアン対策


終章 わが心のサンフアン
忘れ得ぬ日々の地      人々     次はいずこへ      サンフアン50年


あとがき
参考文献

                                                                                                                                                              • -

外郭団体の新入同様の職員が生意気にも掛け合いなどと、外務省はのれんに腕押しで明らかに無視された感じだったが、農林省は反応した。私たちが農学士であることで、一種の親近感があったのかも知れない。農林省は外務省へも働きかけてくれた。ボリビア移民の送り出しは一応中止となった。
しかし、同僚の手紙の効果で現地の要望が受け入れられたことに満足し安堵していたのも束の間、数日後、外務省が方針転換したらしいとの情報が入ってきた。情報は容易に確認できた。
今度は、なぜか農林省が打って変わって冷たかった。
両官庁に突き放された私たちにはもはや為す術が無かった。
一旦移民の送出を停止することを決めた中央官庁の意向を覆したのは、驚いたことに各県と各県の関係団体であった。地方はボリビア移住が決まった待機中の県民を抱えていたのだ。既に財産を整理し隣近所から餞別を貰い、住むところもなくなってしまっている人たちを、このまま国内にとどめ置けというのかと、悲鳴と怒号混じりの強烈な突き上げなのであった。
同僚の願いはあっけなく吹き飛んだ。
ボリビア移民は、このあと、現地からの、中止をとの相次ぐ要請・嘆願にもかかわらず、躊躇なく送り出されていった。
第四次、第五次、第六次・・・・・・それは、サンフアン入植地が陥っていく泥沼の様相への将棋倒しであった。

あの、BHCの粉の中に入れられても平気だったカメムシに対し、BHCは野外の現場では能書きどおりの効果を発揮したのである。
カメムシが落ちた話は、「犬も通わぬサンフアン」の全地区に急速に伝わり、広まった。
BHCの効果が半信半疑で散布を手控え気味だった各入植者は、こぞって自分の稲作現場に出た。

非常に面白い本で、現在、避難所や縁故等の移動がまれにみる大規模で繰り広げられる惨状に、形と状況はかなり違えど示唆を与えてくれる。
北朝鮮帰国事業も、規模と期間、抱える問題点はかなり違うけども、このようなのりの中おこなわれたのであろうか。