犯罪収益規制と財産回復―アセット・リカバリーの国際的潮流と日本の実務への示唆

犯罪収益規制と財産回復―アセット・リカバリーの国際的潮流と日本の実務への示唆 津田尊弘 立花書房(2010/11)
目次--------------------------------------------------------------------------------
はしがき


第1章 はじめに
1 マネーロンダリング対策とアセット・リカバリ


2 国際的なルールの調和の必要性


3 国際的なルールや他国の法制から学ぶ意味


4 求められる日本の貢献


5 本書の構成とアセット・リカバリーのフレームワーク
(1)犯罪収益規制とアセット・リカバリーの国際的潮流(第2章)     (2)犯罪収益が国内にある場合(第3章)     (3)国際的なアセット・リカバリーの法制と実務(第4章)     (4)今後の課題(第5章)


第2章 犯罪収益規制とアセット・リカバリーの国際的潮流
1 歴史的経緯①―麻薬問題から一般犯罪へ
(1)麻薬問題から始まった犯罪収益規制     (2)犯罪収益規制の広がり


2 歴史的経緯②―TOC条約の成立以後
(1)FATF勧告の改訂(2003年)とFATF第3次対日審査(2008年)     (2)没収法制についての議論     (3)麻薬新条約、TOC条約、FATFの相互審査受容国の拡大     (4)まとめ

コラム≪「金融審査」(financial investigation)とは何か≫
コラム≪国際的なルール作り(international rule setting)≫


3 アセット・リカバリ
(1)国連腐敗防止条約以前     (2)アセット・リカバリーの原則


第3章 犯罪収益規制の法制と実務
1 第1段階 予防措置
(1)顧客管理     (2)疑わしい取引の届出制度


2 捜査・口座凍結


3 犯罪収益の没収・追徴


4 被害者への分配


第4章 アセット・リカバリーの法制と実務
1 第1段階 犯罪収益の追跡
(1)日本が要請国である場合     (2)日本が要請された場合


2 第2段階 犯罪収益の没収の要請と没収の実施
(1)日本が要請する場合     (2)日本が要請された場合


3 第3段階 返還の実施
(1)要請国への返還か、没収国における処理か     (2)我が国法制


4 第4段階 返還された財産の被害者への分配
ケース・スタディー≪五菱会事件≫


コラム≪広がるアセット・リカバリーの窓口とネットワーク≫
コラム≪Section 981 (k)の衝撃≫


第5章 今後の課題
1 前提犯罪の立証と犯罪収益の特定
(1)前提犯罪の立証     (2)前提犯罪に係る立証責任の転換等     (3)犯罪収益の特定(例: criminal lifestyle)


2 脱税の前提犯罪化(tax as a predicate offence)
(1)現状    (2)日本法     (3)脱税の前提犯罪化     (4)金融危機後     (5)日本における示唆


3 NCB(Non-Conviction-Based) Confiscation
(1)NCBとは     (2)国際的なルール:国連腐敗防止条約、FATF等     (3)NCBの広がりとマネロン罪の本質     (4)日本への示唆


おわりに

<付録> シンガポールにおける外国の没収命令の共助要請の様式(原文)(筆者訳)


用語
参考文献
索引

                                                                                                                                                              • -

<国連腐敗防止条約第20条>
これは被告人側から正当な経済活動によって得た利益でないという立証がされない限り、不正な行為によって得た蓄財があるという嫌疑があれば、犯罪として立件が可能になるというものです。端的に言えば、不正におカネを貯めたら犯罪になってしまうという制度ですから、このような規定の導入にはもちろん慎重でなければなりません。「自国の憲法及び法制の基本原則に従い」との文言も、憲法上の財産権の保障や無罪推定の原則との関係で問題が生じうることへの配慮から付されています。また、一部の国は、条約の批准に当たり、不正蓄財を犯罪とすることは自国の法制に照らして違憲であるとして、留保を付しています(例:カナダ)
さて、不正蓄財を犯罪として扱うことは確かに慎重な検討を要する事項ですが、そもそもこの制度の主眼は、むやみやたらに刑事罰の範囲を広げることにはなく、むしろマネロン罪の「マネーに着目する」という性質に近いところにあることを強調したいと思います。不正蓄財を犯罪とすることは、マネロン罪を効果的に活用するために前提犯罪の立証を軽減することの延長線で、前提犯罪を推定つつ、不正な資金を取得し保有したこと自体を犯罪とみなすというものです。前提犯罪の立証の軽減を推し進め、「推定してしまう」ということですから、「個々の犯罪行為から、マネーへ」というマネロン罪に係る着眼点の究極形といえましょう。
「不正蓄財」を犯罪として扱う制度を日本に導入することの是非はさておくとしても、このような犯罪類型が想定されるのも、マネーの動きから事案の解明に入るというマネロン罪の本質と密接に関係があることをご理解いただけたらと思います。

機動警察パトレイバー2 the Movie
電話で進捗具合を聞く後藤「しかしよく調べたね」 松井「犯罪の陰に女と金。女は専門外なんで、金の流れを追いかけたのさ」

フリージング4話 秩序の守護者イングリット先輩「うっ!? フリージングがさらに強くなった!?」