アメリカと宗教―保守化と政治化のゆくえ 堀内一史 中央公論新社(2010/10)


目次--------------------------------------------
はじめに

序章 アメリカ宗教概観
1 各宗教と5つの特徴
プロテスタント     ローマ・カトリック     ユダヤ教    イスラーム教    モルモン教    教会所属率の増加    宗教内の多様化


2 プロテスタントの拡大と分裂
バプテスト派教会    メソジスト派教会    ルター派教会    ペンテコステ派教会    長老派教会     回復派教会    米国聖公会    ホーリネスト派教会    会衆派教会    主流派福音派    原理主義の台頭


第1章 近代主義原理主義の闘い―『種の起源』と高等批判
個人の魂の救済か、社会の改善か
「進化論」と「高等批評」の登場
近代主義
近代主義
原理主義者の信条
近代主義原理主義の論争
北部長老派内での論争
スコープス裁判
辣腕弁護士対元国務長官
直接対決
ブライアンの敗北と判決
原理主義者たちの撤退


第2章 宗教保守化の背景―南部福音派のカリフォルニア流入
南部福音派とは何か
南部福音派の起源
南部の孤立と信仰の醸成
カリフォルニアへ―世界恐慌と砂嵐
地元に溶け込めない移住者たち
カリフォルニアへの浸透
防衛移住と保守的労働者の移入
拡大する南部バプテスト連合
南部福音派の「使命感」
「サンベルト」の出現


第3章 主流派とリベラリズムの隆盛―1930〜60年代の潮流
大きな政府とリベラル派
結集―NAEとNCC
リベラル派の意識
法廷でのリベラルな判決
両派の海外展開
原爆投下への分かれる見解
アイゼンハワーと「市民宗教」
公民権運動への態度
公民権運動と黒人宗教指導者
深まる保守派とリベラル派の溝
反戦運動とさらなる分化
変わるアメリカ―高等教育の普及
翳る宗教の影響力


第4章 原理主義福音派の分裂―新福音派・福音左派の登場
原理主義の分裂
福音派とフラー神学校
ビリー・グレアム
「大統領専属牧師」
宗教者の反共産主義運動
原理主義からの非難
公民権運動への共鳴と「左派」
福音左派の誕生
高学歴化と新福音派・福音左派
福音派の「シカゴ宣言」


第5章 政治的保守の巻き返し―ゴールドウォーターからレーガン
ゴールドウォーター選出の意味
「切り札」レーガン
レーガンの政治への道
レーガン州知事当選
ヴィゲリーとニューライトの登場
活気づく保守派
ニューライトの「新しさ」
ニューライトの3つの軸
クソンとグレアムの蜜月
カーターの登場
宗教との距離
原理主義たちの「目覚め」


第6章 宗教右派の誕生―自閉から政治の世界へ
リベラル派と保守派の相互不信
アナハイムの戦い
教科書採択をめぐる保守の結集
同性愛、男女平等をめぐる対立
ジェリー・ファルウェル
カーターの「裏切り」
妊娠中絶反対と「世俗的人道主義」の創造
テレビ伝道師
宗教右派」の誕生
モラル・マジョリティの結成―政治の世界へ


第7章 大統領レーガン宗教右派の隆盛―1980〜90年代の政治との関係
レーガン宗教右派取り込み
ネオコン第2世代
レーガンの大統領就任と冷たい仕打ち
レーガンの強硬な反ソ政策
スキャンダルによる低迷
パット・ロバートソン
キリスト教連合の創設
宗教右派を牽引する集団
クリントン政権と反発
ギングリッチ革命
保守勢力の自戒


第8章 共和党ブッシュ政権宗教右派の結集―政策への関与と”失敗”
W・ブッシュの大統領当選
政権と宗教右派
9.11テロ事件とイラク戦争
フォーカス・オン・ザ・ファミリーの台頭
ジェイムズ・ドブソン
ラジオ番組での人気拡大
同性婚反対での宗教右派結集
同性婚―大統領と議会の異なる判断
宗教票によるW・ブッシュ再選
同性婚反対と再選支持との関係
宗教右派による圧力と分裂
2006年中間選挙での敗退


第9章 オバマ政権誕生と宗教左派―政教分離と左派意識
オバマの大統領就任
就任式での3タイプの祈祷
「慈善の選択」の継承と発展
オバマと信仰
2008年の大統領選と宗教票
福音派左派の再興
ロナルド・サイダーとジム・ウォリス
宗教右派の衰退
若年層の敬遠
福音派の変容―新世代の登場
中間主義的福音派
宗教左派
宗教左派と政治
主流派・福音派の盛衰
キリスト教徒と寛容


あとがき
主要参考文献
アメリカと宗教関連年表

                                                                                      • -

クリントン政権は、政権発足の2週間後、同性愛者の軍隊入隊を解禁し、この措置がリベラル派と保守派の「文化戦争」を激化させた。さらにクリントンは、アメリカ社会に欠けていた国民皆保険制度を導入する法案を議会に提出した。これに対して中小企業と民間健康保険グループは、キリスト教連合、アメリ保守連合といった保守団体と「健康保険選択連合」などの団体を形成し反対した。
 キリスト教連合などの宗教右派の反対は、連邦政府が個人の自由に介入すること、財源が税収であり「大きな政府」につながること、またアメリカ全体の13%を占める宗教系病院が、宗教的ガイドラインに沿わない、中絶などの医療行為や避妊薬などの薬剤を提供せざるをえなくなることなどからだった。

先輩は放課後、聖杯戦争にまきこまれているんですぅ〜。