テロ!ペルー派遣農業技術者殺害事件 寺神戸曠 東京図書出版(2013/4/19)


目次--------------------------------------------
プロローグ
第1章 ペルーで起きた事件
第2章 ペルー野菜生産技術センター計画
第3章 自然・人・野菜
①自然
②人
③野菜
第4章 国情
第5章 顔の無い国際協力
第6章 コカvs野菜
第7章 責任の所在
エピローグ
引用・参考文献

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非合法コカ栽培の仕事は、おおっぴらでする筋合いのものではないので、そのための土地は、通常は人里を離れるなど目につきにくいところで、比較的伐開が容易な、例えば再生林地のような土地が選ばれる。伐開の後開墾や耕耘など一切しない。焼畑だ。地力が衰えたら、また発見され危うくなったら、次の土地に移る。まさに略奪農法の典型である。更に、これが決定的な利点なのだが、収穫物を売ること、つまり現金化にほとんど問題がない。最初から値段がほぼ決まっており、契約栽培のようなものだ。
 一方、野菜栽培とは、丁寧に耕された栽培用地の準備から始まって、苗仕立て、植え付け、肥培管理、病害虫防除など、これらを栽培管理とひと言でいうが、おそろしく手間がかかり(ほとんど毎日手をぬけない)、しかも、その手間にはなかなかに細やかな神経と手先の技能が要求されるものなのだ。その上、その作柄はいとも簡単に天候に左右される。さらに、それを売る段となったら、これは、農家自らはほとんどお手上げだ。仲買人に頼るしかない。
 このような決定的な差があるのに、何を根拠に競合などということがいえるのだろうか。「コカ対野菜」は最初から勝負がついている。労働内容の単純さ、換金の容易さ、そして収益率において、コカに勝る作物を見出すことはまず困難だ。だからこそ、コカ栽培の可能な国々が頭を悩まされるのだ。
 野菜栽培は、一般に、消費者の多い都市の周辺にある土地によって成立する農業の一つの形である

未確認で進行形