狂犬病再侵入―日本国内における感染と発症のシミュレーション 神山恒夫 地人書館(2008/03)


目次--------------------------------------------
第1章 狂犬病人獣共通感染症
1.1 ヒトの感染症の60%は動物由来
1.2 日本の人獣共通感染症
1.3 狂犬病ウイルスとリッサウイルス


第2章 動物の狂犬病
2.1 イヌとネコの狂犬病―都市型野生動物と都市型狂犬病
2.2 エキゾチックペット(フェレットや齧歯目動物など)や家畜(ウシなど)の狂犬病
2.3 森林型狂犬病―野生の地上哺乳類(キツネ、アライグマなど)
2.4 コウモリの狂犬病


第3章 ヒトの狂犬病
3.1 狂犬病ウイルスの侵入と中枢神経への移動―潜伏期
3.2 初期(前駆期)の症状
3.3 脳への到達と増殖―興奮・狂騒期(急性神経症状期)と麻痺期(昏睡期)
3.4 実験室診断
3.5 100%の致死率


第4章 狂犬病ワクチンの開発
4.1 ピエール・ゴルチエルイ・パスツール、梅野信吉
4.2 狂犬病ワクチンの特徴―暴露前接種と暴露後接種


第5章 日本の狂犬病
5.1 狂犬病の日本への侵入
5.2 明治・大正・昭和期の流行と対策
5.3 再流行、そして撲滅


第6章 海外の狂犬病事情
6.1 発生数と流行地域
6.2 韓国と朝鮮半島
6.3 ロシア極東地域
6.4 中国
6.5 台湾
6.6 フィリピン
6.7 タイ
6.8 インド
6.9 オーストラリア
6.10 その他のアジア・太平洋地域
6.11 ヨーロッパにおける狂犬病の歴史と現状
6.12 フランスの経験
6.13 南北アメリカにおける狂犬病の特徴とその対策

Simulation 1
第7章 懸念される日本への再侵入とそのシュミレーション
7.1 再侵入が懸念される理由と、シュミレーションの必要性
7.2 ヒト狂犬病の輸入感染のシュミレーション
Simulation 1 海外から帰国後の発病のシュミレーション(暴露後ワクチン接種受けず)
実例:2006年、日本が経験した輸入狂犬病2例
Simulation 2 海外赴任から帰国後の発病のシュミレーション(暴露後ワクチン接種の遅れ)
実例:スリランカにおける暴露後接種の失敗の例
Simulation 3 海外出張から帰国後の発病のシュミレーション(感染動物と接触した記憶なし)
実例:アメリカ合衆国における食虫コウモリが原因となった狂犬病の例
Simulation 4 在留外国人の発病のシュミレーション
実例:台湾における輸入狂犬病発病例
Simulation 5 海外での臓器移植後の発病のシュミレーション
実例:ドイツにおける移植が原因の狂犬病発生例
7.3 動物の輸入狂犬病シュミレーション―輸入感染と国内発生のグレーゾーン
Simulation 6 動物検疫所内での発病のシュミレーション
実例:イギリスでの動物検疫所内発生報告
Simulation 7 不法輸入動物の発病のシュミレーション
実例:検疫所の判断ミスによる感染動物の侵入例
7.4 ヒト狂犬病と動物狂犬病の国内発生―最も深刻な事態
Simulation 8 ヒト狂犬病の国内発生のシュミレーション(国内野生動物からの感染)
実例:韓国とフランスの経験に学ぶ
Simulation 9 動物狂犬病の国内発生のシュミレーション(港湾での不法上陸動物からの感染)
実例:フランスにおける不法持ち込みイヌが原因となった狂犬病汚染
Simulation 10 ヒトの原因不明の脳炎発生のシュミレーション(リッサウイルス感染)
実例1:デンマークとオランダにおけるコウモリのリッサウイルス保有状況
実例2:イギリスにおけるヨーロッパコウモリリッサウイルスによる狂犬病


第8章 狂犬病をリ・エマージさせない
8.1 エマージングディジーズとリ・エマージングディジー
8.2 動物の輸入禁止、検疫、衛生証明書―水際作戦の三本柱
8.3 万一の侵入に備えて―検査と治療の体制
8.4 イヌワクチン接種の現状
8.5 「70%のイヌにワクチン接種を!」の根拠はどこに?
8.6 イヌ狂犬病のリ・エマージと拡散はワクチン接種で防げるか?
8.7 求められる真の対策―専門家への期待


おわりに―水際が破られた時、拡散の防止から再撲滅へ


あとがき


付録1 感染動物(と思われる動物)に咬まれた時
付録2 ヒトを咬んだ動物の管理
付録3 インターネットによる狂犬病情報の入手方法


引用文献
索引
著者紹介

                                                                                      • -

 しかし、1993年に非武装地帯に隣接した地域で再発生が見られ、その後発生数は確実に増加し続けることとなった。再発生した1993年から2003年までの間に、5名の患者と5種類合計364頭の動物の死亡が報告されている。動物別ではウシ(46%)とイヌ(40%)が多く、野生動物ではタヌキが圧倒的に多い。分離された狂犬病ウイルスの遺伝子解析の結果、最初の感染の源は非武装地帯を越えて北朝鮮から侵入したタヌキであろうと推測されている。現在も、非武装地帯では動物の感染症対策が行われることはないため野生動物にとっては聖域となり、隣接した地域での発生が圧倒的に多い。

 近年海外へ渡航して移植手術を受ける患者が増加していると言われる。背景には日本国内dねお臓器提供不足があるとされるが、その実態は必ずしも明らかにはなっていない。厚生労働省の研究班の調査では、肝臓や腎臓の移植では、中国やフィリピンなどへの渡航者が多いと言われる。また、国内で行われる移植手術の場合でも、臓器の入手先を海外に求める場合があると言われる。このような移植では、臓器の提供者が、狂犬病の潜伏期間であったり、狂犬病で死亡した提供者の死亡原因が誤診されて、ウイルスが潜んでいた臓器が移植された場合でも、それを察知することはできない。なお、このような案件に関して外交ルートを通して問い合わせを行っても、返答が得られることはほとんど期待できないか、極めて長い時間を要することとなる。
 表20に、これまでに世界で10例ほど報告されている移植に伴う狂犬病感染の例を挙げる。このような医療行為が原因となる感染はセンセーショナルで注目を集めるが、極めて例外的な出来事であることには違いない。

扱いが酷過ぎてもだめだろうけど、ナウシカはインドで発禁されることはありえるのか?