紛争鉱物規制で変わるサプライチェーン・リスクマネジメント:人権問題とグローバルCSR調達 KPMG(著)あずさ監査法人(著)東洋経済新報社(2013/3/15)


目次--------------------------------------------
刊行にあたって


はじめに


第1章 サプライチェーンにおける人権問題への関心の高まり
1 人権とは何か
1.1 人権の国際基準


2 企業と人権
2.1 グローバル化がもとらす新しい課題
2.2 生産委託における人権問題
2.3 原料調達における人権問題
2.4 開発プロジェクトにおける人権問題


3 サプライチェーンにおける人権問題の新たな課題としての紛争鉱物
3.1 iPhone工場の労働環境査察


4 サプライチェーンにおける人権問題の新たな課題としての紛争鉱物
4.1 世界最悪の紛争地域
4.2 携帯電話と紛争の関係
4.3 NGOの動向
4.4 NGOを通じて広がるコンフリクトフリー・キャンペーン
4.5 サプライチェーン・リスクとしての紛争鉱物
4.6 紛争鉱物とドット・フランク法


5 企業と人権に関わる国際規制の動向
5.1 国連ビジネスと人権に関する指導原則(ラギー報告書)
5.2 OECD多国籍企業行動指針
5.3 ISO26000
5.4 人身売買および奴隷制に関するビジネス透明化法


第2章 人権問題に係る国際的な取り組みの動向
1 国連 ビジネスと人権に関する指導原則
1.1 国際人権規定の新たな枠組みとしてのラギー・フレームワーク
1.2 国家の保護義務
1.3 企業の人権尊重責任
1.4 救済へのアクセス
1.5 人権デューデリジェンス


2 OECD多国籍企業に関する宣言
2.1 国際投資と多国籍企業に関する宣言


3 ILO基本条約
3.1 労働問題の専門機関
3.2 最も重要な労働基準
3.3 児童労働撤廃への取り組み


4 国連グローバル・コンパクト


5 ISO26000


6 GRIガイドライン
6.1 サステナビリティ報告の世界基準
6.2 G3ガイドラインの構成
6.3 人権に関連した最新改訂
6.4 次世代GRIガイドライン「G4」とサプライチェーン情報開示


7 SA8000


8 OECD紛争鉱物ガイダンス


第3章 米国金融改革法を中心とした法規制の動向
1 グローバルサプライチェーンで広がる人権問題


2 ドット・フランク法1502条
2.1 背景
2.2 法の目的
2.3 コンプライアンスおよび報告のための3つのステップ


3 他の人権関連の法律
3.1 米国
3.2 EU
3.3 豪州
3.4 カナダ


4 サプライチェーンの人権問題に係る企業の取り組み
1 企業の取り組み状況
1.1 サプライチェーンにおける人権問題の課題と対応手法の発展
1.2 企業対応の要点


2 新たな課題としての紛争鉱物対応
2.1 企業経営に与えるインパク
2.2 どう対応すべきか?


第5章 次世代サプライチェーンの方向性
1 サプライチェーンに対する力点の変化
1.1 震災で露呈したもの
1.2 改革の方向性


2 取り組みの実際
2.1 自動車・化学業界のケース
2.2 食品・流通・小売業界のケース
2.3 エレクトロニクス・精密機器業界のケース


3 サプライチェーンへの「リスクマネジメント」の埋め込み


第6章 紛争鉱物等に対する各業界団体等の取り組みの動向
1 紛争鉱物に係る対応の全体像
1.1 紛争鉱物対応をリードするEICC-GeSI
1.2 EICC-GeSIの紛争鉱物対応のコンセプト
1.3 PPAの取り組み


2 川上企業に係る取り組み
2.1 ITRI
2.2 地域内認証制度の取り組み
2.3 ICGLR


3 製錬/精錬会社に係る取り組み
3.1 EICC-GeSI(CFSプログラム)
3.2 LBMA
3.3 RJC
3.4 WGC


4 川下企業に係る取り組み
4.1 米国の川下分野の業界団体の動き
4.2 日本の川下分野の業界団体の動き


第7章 日本企業にとっての実務対応―サプライチェーンデューデリジェンスの実践
1 サプライチェーン調査のアプローチ
1.1 3TG使用状況の把握とサプライヤーサーベイの実施―Phase1
1.2 サーベイ結果の分析とリスク評価―Phase2
1.3 報告書の作成―Phase3


2 サプライチェーン調査の実施タイミングとやり方
2.1 想定される調査プロセスのパターン
2.2 留意すべきポイント


第8章 紛争鉱物の開示―統合報告に向けて
1 紛争鉱物に関する情報開示の現状
1.1 紛争鉱物に関する情報開示
1.2 紛争鉱物に対するサプライチェーン・ポリシー
1.3 CSR報告書における開示
1.4 米国SEC登録企業の年次報告書での開示


2 統合報告に向けた流れ
2.1 財務報告からの動き
2.2 非財務報告からの流れ
2.3 統合報告への流れ
2.4 IIRCの概要


3 統合報告の概要
3.1 統合報告の必要性
3.2 統合報告とは
3.3 統合報告の作成における原則と要素
3.4 統合報告作成までのステップ


4 統合報告と紛争鉱物
4.1 世界における統合報告の状況
4.2 制度開示における先進的な統合報告の事例
4.3 紛争鉱物の開示に挑むSEC登録企業の事例


おわりに

参考文献

索引

著者・執筆者紹介

                                                                                      • -

 従来であれば、このような人権問題は企業の社会的責任(CSR)の一環として、任意に取り込まれてきたが、今回は法制化されることで人権問題に真剣に取り組んでいくという姿勢が打ち出されたことは特筆に値する。同法の影響は大きく、これに続く人権問題に関係する法律が米国内のみならず他国でも法制化又は法制化の検討が始まっている。
 このような法規制は日本企業にとっても対岸の火事ではない。SECに上場している日本企業が対応することは当然としても、非SEC上場の日本企業にも対応を迫っている。すなわち、SEC上場企業と直接取引している日本企業もSECの最終規則で要求されているステップ1〜3までを自社の調査ステップに置き換えて対応しなければ、顧客から厳しい追及があることが予想される。また、SEC上場企業と間接的に取引をしている日本企業(サプライチェーン上にのっている場合)も何階層にも渡ってサプライヤー調査依頼が回り回ってくるため、直上の取引先への調査が必須となる。このように一見、米国の法律であるから、左程影響はないと高をくくるのは禁物である。なぜなら、今日のサプライチェーンはグローバルに展開されているからである。

俺妹あやせたん「通報しました」