太陽と地球のふしぎな関係―絶対君主と無力なしもべ 上出洋介 講談社(2011/8/19)


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はじめに


プロローグ
列車の正面衝突は太陽のせい?     ブラックマンデー     制御不能になった人工衛星「あすか」     飛行機との交信が乱れる  巨大フレアが続々と発生     太陽に頼る地球     無視されている地球


第1章 疑問だらけのありふれた星・太陽
1.1 太陽はどのように生まれ、どのように死ぬのか?
宇宙の根源を求めて     1000兆度が低温?      銀河を創った宇宙の“模様”     2000億個の太陽      太陽は男か女か      太陽崇拝の儀式か天文台か     太陽は何でできている?      太陽はいつまで輝く?       太陽の地震!?


1.2 太陽は何を放出している?
人間に見える太陽がすべてではない      自転の不思議     定数じゃない定数?     人間に見えない太陽からの光


1.3 太陽活動度とは何か?
神を汚すシミ!?      黒点を数えることができるか      黒点が世界史を変える      極度の緊張状態に耐え切れない太陽が解き放つ怒り      絶対君主のやっかいなヒストリー      太陽のご機嫌をX線で診察する       コロナに穴がある?


第2章 生きる地球の「守護神」大気と磁場
2.1 地球の立場は?
国境とは何か     地球の大気はどのようにしてできたのか


2.2 宇宙と地球の接点はどこか?
期待にエネルギーを与えると      プラズマと中性大気の境界


2.3 太陽―地球間には何があるのか?
太陽の磁場を引きちぎってくる?      太陽―地球間は宇宙の実験室     太陽活動が高いとき、低いとき     地球の磁力が低下中!?     命名者はガリレオ     京都二条城の南北線


第3章 太陽と地球の関係を語るオーロラ
3.1 オーロラは「太陽からのメッセージ」?
全身をつらぬくパルス      地球は太陽の中にいる?      オーロラは寒い極地で発生する?      オーロラは「生命が存在できる証」      オーロラが発生するしくみ      札幌―東京間を一秒で吹き抜ける風      太陽風が作る大発電所 


3.2 オーロラの色や形は太陽―地球関係の何を表すのか?
オーロラのいろいろな色     オーロラのいろいろな形      大規模オーロラはなぜベルト状になるのか      オーロラの色が人間の知恵を問う


第4章 太陽がくしゃみをしたら?
4.1 通信回路が乱れるワケは?
太陽の“いたずら”経済問題を引き起こす!      GPSも真っ青!?     飛行機との通信を妨害     宇宙のゴミが落ちてくる


4.2 人工衛星トラブルの犯人は誰か?
「複数犯説」が有力?     オリンピック中継も中断      ワンツーパンチ      犯人は宇宙線バンアレン帯粒子か     ブラジル異常って何?      バンアレン帯の起源      取扱注意の衛星部品


4.3 太陽活動と宇宙線の関係は?
シングルイベント      表面か内部か


第5章 地球生命への影響は?
5.1 動物の方向感覚はどのように太陽の影響を受けるのか?
ちょうどよくない      伝書バトが道に迷う      渡り鳥もイルカも      磁場に敏感な細菌      恐竜の絶滅にも関与?


5.2 植物も磁場をかんじるのか?
キュウリの根を北に向けると収穫が増える?      大事なのは強い磁場か弱い磁場か


5.3 人間は大丈夫か?
第6感の正体は磁場?      磁場が生体細胞に働くメカニズム      生体気象学とは      宇宙飛行士の経験      飛行機は安全か      オーロラとオゾンホール


第6章 太陽がつくる地球周辺の宇宙天気
6.1 宇宙天気予報はなぜ必要か?
微妙な関係     現代の技術社会が危ない     国際プロジェクト


6.2 宇宙天気予報には何が必要か?
長期予報か短期予報か      予報は確率の問題     宇宙天気予報の実際     宇宙天気予報は誰が利用している?      嵐の指標      自宅で宇宙天気予報、自宅でオーロラ見物     宇宙保険とは


6.3 気候の中で天気を見る
宇宙気候とは     氷河期が来る?


エピローグ 今地球が抱える問題
木を見て森を見る     地球環境問題の課題     夜明けの太陽


さくいん
参考文献
巻末

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 図2-11に、この400年間の偏角の変動を示す。江戸時代には偏角はプラス、すなわち東寄りであったのが、約200年前を境にマイナスに変っていることがわかる。何しろ一昔前の測定だけに、複数のデータベースにかなりの差があり、誤差が大きいことを認めなければならいが、1800年より以前は偏角がプラスであったことに関しては共通している。同時期の測量家、伊能忠敬による測定も、それを裏づけている。
 京都や中国の西安のようなX-Y座標を採用している都市の方位決定はどのようにして行われたかについては、歴史研究者の中でも議論の盛んなテーマである。北極星や太陽の南中角度に加えて、地球磁場の方向を利用したというのも有力な候補である。これらは、それぞれ独立に長期変動を示すので、現在になってみると一見南北に見えても、微妙にずれているケースがあり、これもまた研究テーマになる。
 図2-12を見ていただきたい。徳川家康が1601年に9築いたといわれる京都の二条城である。京都の主要道路(たとえば、東側の堀川通)に対して、二条城は右回りに少しずれていることに気がつくだろう。この角度を計ると、約3度である。3度ぐらいのことでとやかく言うなと言われればそれまでだが、京都人ならずともかなり気になる。
 京都に住む歴史研究家・堀貞雄氏の計算によると、二条城に限らず、石川五右衛門の「絶景かな」でしられる、1628年に建てられたとされる南禅寺の山門もやはり右回りに3度ずれているという。
 いちばん考えやすいのは、1200年前の平安京建都に当たっては、北極星か太陽を基本にした南北が用いられ、二条城着工に際しては、磁石で南北を定めたのではないかという説だ。昔は、北極星も今のように真北を指していなかったから(今でも、正確には真北ではなく、17秒の差がある)話は少々ややこしくなるが・・・。もし二条城やエジプトのピラミッドなど、東西南北がしっかりと配置された歴史上の建造物がコンパスを使って着工していたとすれば、逆にそれらの角度を測定することで当時の地球磁場の方向が推定できることになる。
 伊達正宗が日本最古の磁気コンパスをもっていたらしく、副葬品の一つとして発見されている。もし仙台城が1601年、磁石の北をもとにして建造されたとすれば、当時の偏角は東へ7度となり、図2-11とよく合う。