図書館に訊け!

お目ものーと
図書館に訊け! 井上真琴 筑摩書房(2004/8/6)

一九九〇年代の半ば、京都府立総合資料館で井上章一氏の講演会があっときの話である。テーマは「下着の流行史」である。これは後に『パンツが見える。』(朝日新聞社、二〇〇二)に結実した内容のものである。
この作品は、いかに歩いて資料を稼ぐか、身体をつかって渉猟するかの見本のような作品である。彼のラブホテルの研究書『愛の空間』(角川書店、一九九九)も同様である。端倪すべからざる渉猟能力とタフネスぶりには頭を垂れるしかない。渉猟の達人の面目躍如たる作品である。
その際、本人と直接話せる千載一隅のチャンスとばかり、訊いたのである。
「是非、資料探索法を教えていただきたい。いったい、女性の立小便や下着を履かないノーパンの証明資料を、どのように集めておられるのですか。レファレンス・ブックなど絶対ないはずです。何か隠れた方法やツールをお持ちなのですか」
井上氏の回答は、「方法はありません。これはと思われる資料群に目をつけて、すべて読むのです。究極の濫読を突き進むのです。ただし、どのあたりに関連資料があるかを判断する臭覚も必要です。私の考え方では、戦前のエロ情報・風俗出版物で役立つものは必ず発禁になっていると思うのです。ですから、『国立国会図書館所蔵発禁図書目録』をみて、国立国会図書館の発禁本コーナーに通いました。発禁図書の五〇%が左翼思想系、三〇%がエロ系でした」であったと記憶する。